講演情報

[P089]薬学生が行う認知的学習方略の経時変化と方略相互の因果関係の分析

【発表者】近内 茉優1、井上 信宏1、山内 理恵1、江上 佳那1、大野 修司1、久保 元1、山﨑 正博1 (1. 星薬科大学 (日本))
【目的】学習者が学習を進めるやり方、すなわち学習方略は学習の成果に影響することが知られており、特に認知的方略が直接的に学習成績を規定することが明らかとなっている。薬学部においては、薬学生の4年次及び6年次に使用する特定の認知的方略が、CBTレベルの試験成績や卒業試験成績に対し影響することがそれぞれ明らかにされている。したがって、学生の認知的方略の使用法について解析することで、薬学生の学力向上に貢献できると考えられる。先行研究では、認知的方略は進級することで変動する可能性が示唆されているものの、横断的調査であるために認知的方略の時間的変動は明確ではない。そこで本研究では、ある集団を対象に、入学直後の1年次、薬学共用試験CBTを控えた4年次、卒業試験を控えた6年次の3時点で認知的方略を調査することで、薬学部で教育を受ける過程での認知的方略の時間的変動と方略相互の影響を検証した。

【方法】対象は2019年度に星薬科大学に入学した薬学科学生301名のうち、1年次に回答した170名であり、1年次(2019年6月)のほか、4年次(2022年4月)と6年次(2024年4月)にアンケート調査を実施した。調査内容は、認知的方略に関する3因子12項目とした。得られたデータについて、IBM SPSS Amosを用いて各方略の6年間の変動を潜在成長モデルによって、方略相互の影響を交差遅延効果モデルによって解析した。本研究は星薬科大学倫理審査委員会より審査対象外の判断を受けている。

【結果及び考察】アンケート調査の結果、1年次は170人(在籍数に対し56.5%)が回答し、4年次は103人(1年次回答者に対し60.6%)、6年次は106人(同62.4%)が回答した。潜在成長モデルにより、反復作業方略及びまとめ作業方略の使用が進級によって減少することが確認された。交差遅延効果モデルにより、深い処理方略(1年次)→反復作業方略(4年次)(β=-0.24**)、深い処理方略(4年次)→反復作業方略(6年次)(β=-0.20*)、反復作業方略(4年次)→深い処理方略(6年次)(β=-0.21*)の交差遅延効果が確認された。以上の結果より、薬学生は過去の方略の使用状況に応じて認知的方略の使い方を複雑に変化させることが示された。