講演情報

[P093]薬学教育における社会実装能力育成の実践と評価:昭和医科大学の取り組み

【発表者】肥田 典子1、山崎 太義1、滝 伊織1 (1. 昭和医科大学大学院 薬学研究科 臨床研究開発学分野)
【背景・目的】薬学研究における成果を社会問題解決に結びつける社会実装の重要性が高まっている。昭和医科大学薬学研究科では、学生の創造性と実践力を育む教育プログラムとして、「研究の社会実装概論」を2024年度より開講した。本プログラムは、研究成果を臨床課題解決に結びつける実践力育成を目的とし、①理論学習と実践演習の統合モデル構築、②産学連携を通じた社会還元プロセスの体得を特色としている。本発表では、このプログラムの設計、実施、評価を通じて、社会実装能力育成に関する教育効果を評価することを目的としている。
【方法】講義はオンデマンド動画による基礎学習と対面ワークショップによる実践演習を組み合わせた形式で構成した。学生は臨床現場や日常生活で観察した課題から臨床ニーズを抽出し、製品アイデアを提案するプロセスを体験した。講義終了後にアンケート調査を実施し、理解度や応用可能性について評価した。
【結果】講義終了後のアンケートでは「社会実装プロセスの理解深化」(平均4.3/5点)、「自身の研究への応用可能性」(4.1/5点)が高評価を得た。ワークショップ参加者の87%が「多職種協働の重要性を実感」と回答した。また、ワークショップ形式が学生の主体性と創造性を刺激し、多職種協働の重要性を認識する機会となった。一方で、専門用語の平易化や討議時間の拡充が課題として挙げられた。
【考察】本プログラムは、従来の講義型教育を超えた理論と実践の統合モデルとして有効であり、学生の社会的価値創出能力を高めることが確認された。今後、学生の長期的な成果追跡を通じて、更なる教育効果の検証が求められる。