講演情報

[P097]名古屋市立大学病院群における施設横断的教育プログラムの構築と効果

【発表者】日比 陽子1,2、和知野 千春1,3、木村 理恵2、三村 佳久1,2、大久保 奈美4、恒川 有里5、諸角 一成6、長水 正也1,6、野田 雅人1,3、橋本 功4、中村 康夫5、森下 修行6、堀田 祐志1,2、近藤 勝弘1,3 (1. 名古屋市立大学大学院医学研究科臨床薬剤学分野 (日本)、2. 名古屋市立大学病院薬剤部 (日本)、3. 名古屋市立大学医学部附属東部医療センター薬剤部 (日本)、4. 名古屋市立大学医学部附属みどり市民病院薬剤部 (日本)、5. 名古屋市立大学医学部附属みらい光生病院薬剤部 (日本)、6. 名古屋市立大学医学部附属西部医療センター薬剤部 (日本))
【背景】
名古屋市立大学病院群(病院群)は、現在6病院で構成され、施設ごとに最大800床から最小80床まで、また急性期から回復期・慢性期に至るまで様々な規模と特色を持っている。新入薬剤師は病院群で一括採用し入職後に各施設に配属する。将来的には病院群間の人事異動も行われることも見据えて、病院群薬剤部全体で新人教育内容を標準化することを目的とした「施設横断的教育プログラム」を作成し、2024年4月より開始した。
【方法】
「施設横断的教育プログラム」では教育内容を「病院群共通項目(薬剤師業務として共通の処方監査、病棟業務)」と「施設独自項目(病院毎に異なる調剤・調製ルールの習得)」に区分けし、病院群共通項目はグループワーク形式の病院群合同集合研修として実施した。病院群共通項目は4月に5講座行われる①処方監査や病棟業務で必要な知識の習得(導入編)と、5~9月に10講座行われる②領域別の模擬症例を通してスキルを習得(Basic実践編)の2部で構成した。各新人にはメンターが付き、評価表を用いて習得度を確認した。受講者19名に対して入職1年後にアンケートを実施し、自由記載の回答を元に、集合研修を行うことで「役立った点」と「不足していた点」について検証した。
【結果・考察】
集合研修を行うことで「役立った点」については、情報収集の方法を学べたとの回答数が11と最も多く、薬剤の使い方や検査値の見方など実践的な知識を身につけたとの回答数も9であった。また技術や知識に関するものだけでなく、治療のゴールを意識することや病棟業務への取り組み方など、薬剤師として質の高い医療を提供する意識を身につけたとする回答数も9であった。さらに、周囲と共有し協力して問題解決することが身についたとの回答数が4であったことから、集合研修が医療現場に不可欠なコミュニケーション能力の醸成に役立ったことが示された。一方で、「不足していた点」については、病棟業務への従事が始まった後に互いの経験を発表し共有する場があると良いとの回答数が4であった。また、①導入編の研修時に扱った模擬症例ががんに偏っていたため、感染や精神疾患など非がんの症例があると良いとの回答数が3であった。今後はこうした意見を踏まえてさらに教育プログラムの改良を目指す。