講演情報

[P105]初期研修医に対する薬剤部研修の教育的意義と多職種協働への貢献

【発表者】山下 花南恵1、山田 圭位子1、山本 晴菜2、久米 学1、橋田 亨1、室井 延之1,2 (1. 神戸市立医療センター中央市民病院薬剤部 (日本)、2. 神戸市立神戸アイセンター病院薬剤部 (日本))
【背景】近年、医療現場では多職種協働の重要性が高まり、医学・薬学教育では多職種連携教育(IPE: Interprofessional Education)の推進が図られている。医師臨床研修制度においても初期研修カリキュラムでは多職種からの評価が求められ、その一環として当院では2022年より初期研修医1年目に薬剤部・検査部研修を実施している。薬剤部研修は医薬品の適正使用、安全管理、情報活用等について薬剤師との対話を通じ体験的に学ぶ機会である。卒後初期における多職種の教育的関与の効果は十分に検証されておらず、本研究では初期研修医が薬剤部研修を通じて得た理解や態度の変化に注目し、その教育的意義および多職種協働への影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】2022~2024年度に薬剤部研修を受けた初期研修医59名を対象に、薬剤師による評価票(9部署、13項目)を集計・分析した。また、2024年度の研修医アンケート(理解度・活動意識5段階自己評価、自由記述、回収率94%)を分析した。加えて、指導薬剤師・指導医にもアンケート(重視項目・自由記述)を行い、年次別比較、職種間比較、行動変容の自由記述を分析した。
【結果】薬剤師による評価では、研修医の理解度は年次ごとに向上傾向を示し、特にDI (p=0.011)、TDM(p=0.020)、化学療法室業務(p=0.022)で有意差を認めた。研修医の自己評価も、理解の深化や意識の向上など薬剤師と類似傾向がみられた。薬剤師と指導医の重視項目(複数選択)では、薬剤師は薬剤部業務(75%)、投薬プロセス(50%)、医療安全(41.7%)、処方設計支援・監査(41.7%)を重視し、指導医は医療安全(40%)、多職種連携(40%)、処方設計支援・監査(40%)を重視していた。また、指導医からは薬剤師への相談行動、処方確認、医薬品情報活用などの行動変容が見られたと報告された。
【結論】初期研修医は薬剤部研修を通じ薬剤師との接点を得て、薬剤適正使用や医療安全に関する多角的視点を体験的に学ぶことができた。また薬剤師も、自身の役割や医師との連携に対する認識を深め、チーム医療意識を再確認する契機となった。本研究の知見は、薬剤部での実践的な研修が初期研修医と薬剤師の双方にとって多職種協働の価値を実感する貴重な学習機会となるものと考える。