講演情報

[P126]薬学部生の専門力・語学力を育む短期留学プログラム:立命館大学と就実大学における事例比較

【発表者】後藤 秀貴1、山田 陽一2、角本 幹夫1、天ヶ瀬 紀久子1、Benjamin W. Listen3、吉井 圭佑2、阿蘓 寛明2、近藤 雪絵1 (1. 立命館大学薬学部 (日本)、2. 就実大学薬学部 (日本)、3. 就実大学人文科学部 (日本))
【目的】
立命館大学・就実大学では、薬学部生対象の短期留学プログラムとして、「薬学海外フィールドスタディ」(トロント大学・トロント小児病院)、「薬学海外研修」(アデレード大学)をぞれぞれ開講している。2022年度より、両大学は連携してプログラムの評価・改善を図ってきた。本研究では、従来個別に行われてきたプログラムの教育効果検証の知見を参照しつつ(e.g. 後藤ほか, 2025;豊村ほか, 2024)、新たに比較を試みる。具体的には、比較を通じて各プログラムの特徴を示すとともに、英語力の伸びと帰国後のアンケート結果に基づき、互いの教育効果・教育的位置付けを明らかにする。

【方法】
2023年度開講の「海外フィールドスタディ」、「薬学海外研修」を対象に、目的・期間・対象者・現地での日程を含む比較を行い、各プログラムの特徴を抽出した。英語力の伸びを測るため、自己評価(主観的評価)と語学試験(客観的評価)をプログラム前後で実施し、変化を比較した。また、帰国後に実施したアンケート結果に基づき、各プログラムが特にどのような点で学生の成長に貢献したかを分析した。

【結果と考察】
プログラムの比較の結果、立命館大学のプログラムは、大学での薬学・小児医療の専門講義、小児病院での臨床体験といった、専門力・実践力の向上を重視した設計であるのに対し、就実大学のプログラムは、薬局や製薬会社での体験を含む一方で、大学での専門英語授業やホームステイといった語学力の向上を重視した設計であることが明らかになった。また、プログラム前後の英語力を比較したところ、主観的評価では両プログラムとも4技能の全てで向上がみられたのに対し、客観的評価においては、効果量の観点では就実大学のプログラムの方がやや向上が大きかった。一方、帰国後のアンケート結果を分析したところ、目指す将来像を記述する項目では、両プログラムともに専門に関する目標、英語力・コミュニケーション力に関する目標を掲げる回答が観察されたが、立命館大学の方がより前者に関する記述が、就実大学の方が後者に関する記述が目立った。これらの語学試験・アンケートの結果は、上述の各プログラムの特徴と概ね整合しており、プログラム設計に応じた教育効果がうかがえる。今後はこれらのプログラム設計や教育効果が、参加者のプログラムに対する期待や応募動機と合致するかを検証していく必要がある。