講演情報

[P004]薬学統合演習1における自己評価クラスター分析と実務実習成果への予測性の検討

【発表者】長田 洋一1、渡邊 真知子1、安藤 崇仁1、大藏 直樹1、前島 多絵1、岩澤 晴代1 (1. 帝京大・薬 (日本))
【目的】帝京大学薬学部では、4年次を対象に PBL 形式の統合科目「薬学統合演習1」(6単位)を実務実習の事前学習として実施している。本演習は、症例ごとに情報を収集・整理し、薬物治療の問題点を抽出してアセスメントを行い、薬学的管理計画を作成する臨床思考プロセスの習得を目指す。本研究では、演習前後および実務実習後の自己評価データを用いて、①演習が学生の自己効力感に及ぼす影響を定量化し、②演習段階で抽出された学習者クラスターが実習段階でも同じ学習特性を保持するかを検証した。【方法】2023年度4年生228名に対し、演習前後と実務実習後に32項目(5段階リッカート尺度)による自己評価調査を実施し、208名の完全縦断データを解析対象とした。演習前後のスコア差を Wilcoxon 符号付順位検定で検定し、差得点を因子分析(最尤法・バリマックス回転)で4因子(①化学療法力、②薬物治療知識、③リスク評価力、④記録・患者支援力)に縮約した。得点の z 値を k-means 法(k=3)に投入し学習者クラスターを抽出した後、実務実習後の自己評価に対して混合線形モデル(固定効果:時点×クラスター、ランダム効果:ID)で 2 要因分散分析 (ANOVA) を行った。【結果】演習前後で全項目が有意に向上(p<0.01)した。クラスター分析により、①伸びが小さく平均スコアが低位の「ステップアップ待ち層」(C1、n=28)、②中程度の伸びと中位スコアを示す「安定成長層」(C2、n=79)、③ほぼ全項目で大幅改善を示す「ハイパフォーマー層」(C3、n=101)が得られた。因子④が3層間で最も大きなギャップを示した。混合モデルの結果、時点・クラスター主効果に加え時点×クラスター交互作用も有意(p<0.01)で、実務実習後の平均スコアは C1:2.96、C2:3.57、C3:4.18 と序列が維持された。特に C3 は演習後から実習後にかけ+0.90 と最大の伸長を示した一方、C1 は+0.17 と停滞した。【考察】演習段階で得られた3クラスターは実務実習後でも同様の学習到達度と回答行動を示し、演習時の自己評価とクラスター分類は実習成果を予測する有用な指標となり得る。今後は客観評価指標を組み合わせ、クラスター分類の妥当性と学習支援への応用可能性をさらに検証する予定である。