講演情報
[P052]薬学教育の現在地 ─ 医学教育との比較から考える構造的課題と提言
【発表者】名倉 慎吾1、石澤 佑太1 (1. 大阪大学医学部 (日本))
【背景と目的】薬学部は2006年に6年制が施行されてまもなく20年目を迎え、高度な専門的臨床能力を持つ人材の育成が期待されてきた。最新の薬学教育モデルコア・カリキュラムでは「未来の社会や地域を見据え、多様な場や人をつなぎ活躍できる医療人」を目指し、基礎薬学・薬学研究・実務実習が構成されているが、実際の現場では薬剤師の多職種連携、社会との関わり等の側面で課題が残る。変化の大きな医療現場や社会において、薬学教育を取り巻く環境は改革の岐路に立たされている。
【方法】発表者は薬学部卒業後、現在は医学部の教育課程を終えようとしている。両者の6年制課程を経験し、教育構造の差異を実感した立場から、次世代の薬学教育のあり方について提言する。
【結果】発表者の経験から、以下の4点を中心に提言する。1.組織学・解剖学の導入:薬学部では薬理学や薬物動態学に重点が置かれる一方、人体構造や臓器機能に関する教育が限定的である。解剖学・組織学の座学及び実習を教育課程に取り入れることは、ADMEの深い理解や剤形設計、副作用の予測に有益であるだけでなく、医師との議論における共通言語となり、薬物治療提案の説得力が増す。2.臨床推論教育の導入:薬剤師が処方の妥当性を判断し提案を行うには、医師の診断や治療のプロセスを理解する必要がある。PBL形式による臨床推論教育の導入により、薬剤師がチーム医療の中で適切な処方提案や受診勧奨を行う基礎となりうる。3.実務実習の再構成:現行の病院・薬局実習は合わせて約5か月であるが、指導内容の施設間のばらつきが大きく、また医学部の臨床参加型実習と比較して業務見学が中心となりがちである。実習期間を延長し、在宅訪問への同行や退院時カンファレンスへの参加、多様な医療現場での実習など、実践的な力を育む構造に再設計すべきである。4.卒業研究の柔軟化:全ての学生に一律に数年間の長期研究室配属を行うことが効果的とは限らない。研究志望の学生には従来通りの配属を担保しつつ、臨床志向の学生には医学部の選択実習に相当する地域実習や政策提言などの多様な実習を認める柔軟な制度設計が望まれる。
【結語】医学部での教育を受けた経験から、薬学教育の変革について提言した。社会の中で薬剤師が真に価値を発揮するために、教育構造や実習体系の見直しと再構築が不可欠であると考える。
【方法】発表者は薬学部卒業後、現在は医学部の教育課程を終えようとしている。両者の6年制課程を経験し、教育構造の差異を実感した立場から、次世代の薬学教育のあり方について提言する。
【結果】発表者の経験から、以下の4点を中心に提言する。1.組織学・解剖学の導入:薬学部では薬理学や薬物動態学に重点が置かれる一方、人体構造や臓器機能に関する教育が限定的である。解剖学・組織学の座学及び実習を教育課程に取り入れることは、ADMEの深い理解や剤形設計、副作用の予測に有益であるだけでなく、医師との議論における共通言語となり、薬物治療提案の説得力が増す。2.臨床推論教育の導入:薬剤師が処方の妥当性を判断し提案を行うには、医師の診断や治療のプロセスを理解する必要がある。PBL形式による臨床推論教育の導入により、薬剤師がチーム医療の中で適切な処方提案や受診勧奨を行う基礎となりうる。3.実務実習の再構成:現行の病院・薬局実習は合わせて約5か月であるが、指導内容の施設間のばらつきが大きく、また医学部の臨床参加型実習と比較して業務見学が中心となりがちである。実習期間を延長し、在宅訪問への同行や退院時カンファレンスへの参加、多様な医療現場での実習など、実践的な力を育む構造に再設計すべきである。4.卒業研究の柔軟化:全ての学生に一律に数年間の長期研究室配属を行うことが効果的とは限らない。研究志望の学生には従来通りの配属を担保しつつ、臨床志向の学生には医学部の選択実習に相当する地域実習や政策提言などの多様な実習を認める柔軟な制度設計が望まれる。
【結語】医学部での教育を受けた経験から、薬学教育の変革について提言した。社会の中で薬剤師が真に価値を発揮するために、教育構造や実習体系の見直しと再構築が不可欠であると考える。