講演情報

[P050]若手薬剤師を対象としたプレアボイド研修による報告行動および報告内容への影響

【発表者】髙橋 祐介1、髙橋 渉2、佐藤 美弥子1、島貫 英二3 (1. クオール株式会社教育研修本部専門教育部 (日本)、2. クオール株式会社教育研修本部専門教育部DIグループ (日本)、3. クオール株式会社教育研修本部 (日本))
【背景】プレアボイドとは、薬剤師が処方監査を通じて有害事象の発生を未然に防いだ事例を指し、医療安全の観点からその報告は重要視されている。特に若手薬剤師においては、報告行動の習熟に課題があり、教育的介入の必要性が指摘されている。また、実施した研修の効果を検証することも重要である。本研究では、プレアボイド研修が若手薬剤師の報告行動および報告内容に与える影響を検討した。

【方法】2024年7月24日~8月25日にかけて、薬局勤務経験1年以上の若手薬剤師を対象にプレアボイド研修を実施した。研修はeラーニング形式で行い、「研修の進め方」「医薬品リスクと薬剤師の役割」「患者背景情報の活用」「プレアボイド事例からの学習」「プレアボイド報告制度とその実践方法」の各モジュールで構成した。
研修開始直前および終了6か月後に、プレアボイド報告経験の有無を調査し、終了6か月後には報告内容に関するアンケートも実施した。研修受講者175名のうち、研究参加に同意し、両時点のアンケートに有効回答を提出した131名を解析対象とした。
主要評価項目はプレアボイド報告経験の有無に関する研修前後の比較とし、副次的評価項目として、収集された報告事例について「仮に服薬した場合の影響」「判断根拠」「処方変更内容」などを集計・分析した。

【結果】解析対象131名において、プレアボイド報告経験が「あり」と回答した割合は、研修開始前の28名(21.4%)から、研修終了6か月後には81名(61.8%)へ統計的有意に増加した。報告された81件の事例のうち、56件(69.1%)が「服薬した場合に健康被害が生じる可能性がある」と分類された。
判断根拠としては、「該当処方箋と薬局で管理している情報に基づく判断」が40件(49.3%)と最も多かった。処方変更の内訳は、薬剤変更26件(32.1%)、薬剤削除22件(27.2%)、用量変更14件(17.2%)であり、いずれも患者の安全に直結する介入であった。

【考察】本研究には、研修前後の調査間に6か月の期間があるため、研修以外の影響を完全に排除できないという限界がある。しかしながら、本研修は若手薬剤師のプレアボイド報告行動の促進および報告内容の質的向上に寄与した可能性がある。さらに、報告内容の分析から、これらの介入が有害事象の未然防止に貢献していることが示唆された。