講演情報

[EL1]人材育成のための新たな挑戦―臨床現場と大学の連携―

宮田 興子 (神戸薬科大学)
〇略歴:
1975年3月 神戸女子薬科大学薬学研究科修士課程修了
1976年4月 神戸女子薬科大学助手
1981年~1982年 フンボルト財団の奨学研究員(ドイツ)
1987年4月 同大学講師
2001年4月 神戸薬科大学助教授
2008年4月 同大学教授
2019年4月 同大学学長、理事
2022年6月 同大学理事、理事長現在に至る。

【受賞歴】
2005年10月 有機合成化学協会関西支部賞
2013年 8月 特別研究員等審査会専門委員表彰
2016年 3月 日本薬学会学術貢献賞
2016年 5月 兵庫県教育功労賞
〇本文:
 薬学の使命は、“世界中の人々が健康で幸せに過ごすことができる社会の実現”であり、これを達成するためには、大きく3つのテーマ、すなわち(1)薬学という学問の発展、(2)創薬の発展、(3)医療の発展に貢献していく必要がある。さらにそれぞれのテーマを実現するための人材育成も重要である。テーマ(3)の強化のために、平成18年(2006年)に、6年制薬学部が開始され、約20年が経過しようとしている。より良い薬学教育を目指して、モデル・コア・カリキュラムも数年ごとに改訂され、直近では、令和4年に「変化し続ける未来の社会を見据え、多様な場や人をつなぎ活躍できる医療人の養成」を目指して、薬学教育モデル・コア・カリキュラムが改訂された。今回の改定では「求められる基本的な資質・能力」に関して原則として医学・歯学・薬学の3領域で共通化する一方、「薬物治療の実践的能力」を薬学独自の資質・能力として加えられた。また、特徴の一つとして、小項目に<ねらい>という項目を設け、他の領域とどのような関連性があるかを記載することとなった。さらに、「F臨床薬学」においても、B~G領域の学修内容とのつながりを重要視され、科目間の繋がりが可視化されたので、学生にとって学修内容が理解しやすくなった。
 今回のモデル・コア・カリキュラム改訂に関連して、臨床現場と大学の教育連携を意識して、2023年12月から、1ヶ月に1度、薬剤師の先生方との意見交換会を開催しているので、この活動について紹介する。この意見交換会で、薬剤師の先生方から臨床のことを教えていただくことにより、臨床に役立つ有機化学や医薬品化学を大学のカリキュラムに組み込むことができ、また、同時に業務上の課題や疑問に思われていることも解説していただき、基礎薬学(特に有機化学)で説明可能な点については解説している。必要に応じて、大学内の他分野の先生方にも講演等でご協力いただき、大学と臨床現場の相互理解を深めている。大学と臨床現場のハードルを下げて自由に行き来して、お互いをより深く理解することができれば、大学と臨床現場の教育を繋げることができ、学生への学修効果が上がると確信している。さらに、この交流を通して薬剤師の先生方が発見されている臨床現場での問題点を大学の先生方と共有することにより、共同研究に発展し、win-winの関係を築くこともできると考える。臨床現場と大学との連携の在り方について、先生方と意見交換ができましたら幸いです。