講演情報

[EL5-2]実習生から実習生へ受け継がれる みどり薬局の地域への想い

坂口 眞弓(みどり薬局)
〇略歴:
慶應義塾大学薬学部(旧共立薬科大学)卒業。
千葉大学大学院 医学薬学府 先端医学薬学専攻修了。博士(薬学)取得。
東京大学医学部附属病院薬剤部勤務を経て
現在 みどり薬局・みすじ薬局・ゆうま薬局(台東区) 開設 
東京薬科大学 客員教授
アプライド・セラピューティクス学会理事
一般社団法人 浅草薬剤師会 監事
公益社団法人 東京生薬協会 監事

【受賞歴】
2004年 台東区表彰
2007年 薬事関係功労者東京都知事感謝状
2013年 東京都教育委員会表彰
〇本文:
 みどり薬局は、焼け野原だった戦後の台東区蔵前で開局し、今年で78年を迎えます。かつては町工場やおもちゃ問屋が立ち並ぶ下町でしたが、今ではおしゃれなカフェや雑貨店が並び、「東京のブルックリン」とも呼ばれる街へと変貌を遂げました。高層マンションの建設に伴い若い世帯が増え、当薬局の利用者層も、お子さまとその保護者が中心となっています。
 当薬局では、2010年から薬学生の実習を受け入れ、これまでに64名の実習生が学びました。現在も連絡を取り合っている元実習生は多く、就職や国家試験の報告にとどまらず、転職、結婚、出産といった人生の節目にも訪ねてきてくれます。実習生同士で結婚したカップルも4組あり、実習が縁をつないだことを嬉しく思っています。元実習生が薬局を訪れた際には、ちょうど実習中の学生と交流の時間を設け、国家試験の勉強法や就職活動のアドバイス、実習での学びを深めるためのヒントなどを伝えてもらっています。
 当薬局では、看護師や管理栄養士と連携し、「みどりの保健室」という地域住民向けの相談日を設けています。薬剤師も日々様々な相談に応じていますが、他職種それぞれの視点や、薬にとらわれすぎない柔軟な対応力に触れ、感銘を受ける学生も少なくありません。
 実習では、とにかく多くの来局者と対話することを目標としています。最初は「今日はどうされましたか?」と定型的な質問から始まり、薬の説明に終始する傾向がありますが、次第に患者さん一人ひとりの生活背景に寄り添った服薬指導ができるようになります。
 さらに、当薬局では「Open Pharmacy」という地域交流イベントも実施しています。浅草地区にある2つの支店と合同で、実習生5名がチームを組み、年に数回、過去の企画や反省を参考にしながら、参加者に喜んでもらえるイベントの企画・運営に取り組みます。イベント終了後、実習生たちの達成感に満ちた笑顔を見るたびに、指導者としてのやりがいを感じています。
 調剤業務にとどまらず、地域に根差した活動を続けてきたみどり薬局での実習について、本シンポジウムでご紹介させていただきます。