Joint Meeting of JSCB 77th and JSDB 58th

「教育講演」Educational Lecture (in Japanese)

「教育講演」Educational Lecture (in Japanese)

July 16, 2025, 8:30-9:15, Room B

Prof. Masayuki Miura (Univ. of Tokyo)

三浦正幸先生

基礎生物学研究所・所長(2025年4月1日より)

「研究テーマの発生:プログラム細胞死を生き物に問うには」

私は中高で2つの本に出会って発生生物学に興味がコミットしました。1つは林雄次郎先生の「卵はどのようにして親になるか」、もう一つは岡田節人先生の「細胞の社会」です。1つの受精卵から様々な細胞ができてくるのがとても不思議でした。大学院では手探りで細胞分化の研究をやっていましたが、留学先を探すにあたり遺伝学を使って細胞運命を研究しているところに手紙を出しました。しかし私の求めは全て却下されてしまいました。そんな中、プログラム細胞死研究を行っていたH. R. Horvitz先生は不採用手紙の中で弟子のJ. Yuan先生を紹介してくれました。ここから細胞が生きるか死ぬかという運命決定の研究のが始まりました。留学では、「如何にして細胞が死ぬのか」という研究を行いました。帰国して自身の研究グループを持つようになって始めたのは「何故細胞死がおきるのか」を解く研究です。仕組みの研究から現象理解の研究へと進むことにしたわけです。仕組みの研究ではアポトーシス研究の源流に直に触れてきましたが、現象の研究は河口から海へ漕ぎだす困難がある一方で、航法を考え、寄港する場所を選ぶ楽しみがあります。この講演ではこれまでの私の研究テーマ変遷をネタに、生き物に問う研究の仕方を一緒に考えたいと思います。