講演情報

[P123]薬学部3年次における基礎と専門をつなぐ学修支援の試み

【発表者】畑 春実1、吉田 卓史1、建部 卓也1、高木 彰子1、丸山 桂司1、戸田 雄大1 (1. 帝京平成大学薬学部 (日本))
【目的】近年の薬剤師国家試験では、薬理学や病態・薬物治療学との繋がりを意識した複合的な実践問題が多く出題されている。しかし、これらの科目は学修すべき内容が膨大であるために、低学年(2~3年次)から苦手意識が根付いてしまい、学修進捗の遅れ、学修意欲の低下を引きおこし、退学・進路変更を選択していく学生が少なくない。そこで、生物学、薬理学、薬物治療学を縦につなげる教育に取り組むことが、学生が苦手意識を克服し、より効率良く理解が深まる学修の支援につながるのではないかと考え、試みた。

【方法】2024年10月~11月に4回、薬学部3年生を対象に双方向型の授業形式で補習(自由参加)として実施した。各回終了時に自由記述のアンケートを実施した。

【結果・考察】4回の補習は、薬理学専任教員と実務家教員が担当した。各回のテーマは、「生体の情報伝達機構を受容体からとらえる」、「3年次前期に実施した実習の内容を膨らまして」、「気管支喘息を理解しよう ~肺機能検査から治療薬の選択まで~」、「薬理(薬物の作用点)から生物、あるいは病態へ下って勉強してみるやり方」であった。各回、生物学、薬理学、薬物治療学の科目間を、低学年から高学年へ(高学年から低学年へ)縦につなげることを意識した内容だった。終了後のアンケートでは、「2年生で習った時は意味を正しく理解しようとせず暗記をしていた。」「これからは頭ごなしに覚える方法を改めないといけないと思った。」「薬を個々に覚えるのではなく、他と関連付けて勉強していきたい。」などの回答があった。本学では2年次前期から3年次後期まで薬理学の履修が継続しており、その中で今回の補習に参加したことで、学生はこれまでの学修方法を見直す機会となったと考えられる。薬学部3年次は、基礎的な知識(薬理学、生物学、化学等)と専門的な内容(臨床薬学、薬物治療学、実務等)を橋渡しする段階であり、この「つなぎ」が上手くいくための学修支援が重要であることが今回のアンケート結果で示唆された。生物学、薬理学、薬物治療学を縦に繋げる学修アプローチにより、学生は丸暗記ではなく理解を深める学修に取り組み、薬剤師として必要な知識を学ぶことができると考えられる。基礎知識と専門知識がどのように関連しているかを示す授業を設ける等、今後の学修支援を検討していきたい。