講演情報
[P037]分析化学実習におけるHPLCの活用事例:TDM測定を学ぶ
【発表者】川原 正博1、馬橋 サヤカ1、吉岡 まり絵1、根岸 みどり1、田中 健一郎1、松下 美由紀2、森川 悟2 (1. 武蔵野大学薬学部、2. (株)日立ハイテクアナリシス)
【序論】薬学教育モデルコアカリキュラムの改訂に伴い、基礎薬学である分析化学領域でも医療現場における応用が重視されてきている。武蔵野大学では2年時後期に「物理系実験実習Ⅰ」として、分析化学実習を開講しており、酸塩基滴定による食酢中酢酸濃度の定量、清涼飲料水中のカフェイン濃度の定量などを行ってきた。今回、治療薬物濃度測定(Therapeutic drug monitoring: TDM)の理解を深める目的で、模擬血清中薬物の固相抽出による前処理とHPLCによる薬物濃度の定量分析を行った。【方法】HPLC装置としてChromaster ®((株)日立ハイテクアナリシス)及びODSカラムを用い、移動相セット、前処理液セット、スピンカラムセット、カルバマゼピン標準溶液((株)日立ハイテクアナリシス)を活用した。なお、HPLC装置は8台用い、学生は8人ずつの班に分かれて実験を行った。抗てんかん薬カルバマゼピンの標準液を用いて検量線を作成した後、未知濃度のカルバマゼピン溶液(10%馬血清含有)に対して、スピンカラムを用いる固相抽出を行い、カルバマゼピン濃度の定量分析を行った。【結果及び考察】HPLC、前処理法、TDM測定に関しては2年時前期に「医薬品分析化学Ⅱ」において講義しているが、実習後のアンケートでは、“座学で学んだことを自ら手を動かすことによって理解が深まった”、“薬剤師になった際に行う実験を行うことによって改めて薬剤師として働く覚悟が高まった”など好意的な感想が多く、TDMにおける前処理の重要性についても理解が深まっていた。また、求めた未知試料中のカルバマゼピン濃度を他班の結果と比較することによって、自らの実験操作の問題点を考察することも出来た。分析化学は多くの学生が苦手とする科目であるが、薬剤師にとって必須のtoolであるTDM測定を実習に取り入れることによって、薬剤師の業務と分析科学との関りについての理解が深まることを期待している。