講演情報

[P043]短編動画の活用による「有機化学」基礎事項の効果的な学習法

【発表者】山中 大樹1、【発表者】中嶋 宏太1,2、【発表者】鈴木 英治1、郡 涼介1、小笠原 彩1、中山 大明1,3、池上 有理香1、中込 広大1,4、村﨑 史歩1、長谷川 真子1、岩﨑 絵理佳1、石川 和樹1、島﨑 学1 (1. 帝京平成大学 (日本)、2. 昭和医科大学薬学部 病院薬剤学講座 (日本)、3. 国際医療福祉大学 成田病院 (日本)、4. 国際医療福祉大学 熱海病院 (日本))
【目的】「有機化学」は薬学教育における重要科目である一方、多くの学生が苦手意識を抱いている。近年では基礎科目に対する入学時の学力に配慮した学習支援が求められている。今回は個別指導を意識した「短編動画」の作成過程および習熟度が低かった学生への学習効果について検証する。
【方法】本学就任以来、歴代の卒論生がボランティアでチューターを務め、放課後などの授業時間外に1年生に対しての「化学」の学習支援に取り組んできた。2019年度に「有機化学の苦手意識の要因把握」を目的に1年生を対象としたアンケートと個別指導を実施し、理解度や意識の変化を検証した。翌年のコロナ禍を機会に上記のアンケート及び歴代チューターの意見を踏まえた講義動画を制作し、遠隔講義を実施した。その後もこれらの動画は学内サーバーで視聴可能とした。しかし講義動画は要点を絞り短時間で視聴するには不便であった。そこで学習効率向上を目的に、要点ごとに表題を付け、随所に画面拡大を導入してスマホに対応し5分程度に再編集した「短編動画」を科目内公開したが好評であった。しかしこの公開方法では対象学年外の視聴希望者などにはアクセス不可で応じられなかった。そこで2024年3月にYouTubeアカウント「有機化学・ひでchannel」を開設し誰でも視聴できる形にした。動画は個別指導型の構成とし、重要項目の講義、演習問題と解説を組み合わせた段階的学習とした。2024年度新カリキュラムから導入された習熟度別クラスのうち演習受講者(約60名)に学内からこの短編動画を配信しながら演習を実施し、講義後のアンケートと視聴履歴を解析した。
【結果】2019年度の調査で、立体化学では分子モデルが有効であったので、分子モデルを撮影した「#10 立体化学_分子模型入門」は好評であった。一方、「共鳴」は、原子価や電子配置など基礎概念の不明確さ、H原子を省略した「ケクレ構造式」への不慣れが苦手意識の一因であった。これに対しワークブックを用いた実践的な学習をイメージした「#1ルイス構造式の組み立て方」「#2 形式電荷を理解しましょう」や、一緒に手を動かしていくイメージで作った「#4 共鳴矢印を一緒に書きましょう」などが好評で、教材においても手を動かすプロセスを重視することが効果的であった。
【結論】入学初期段階での個別指導を意識した動画の活用は、かなり効果があったといえる。