講演情報

[P055]教育用電子薬歴の開発と臨床準備教育への導入

【発表者】広瀬 雅一1、松田 幸久2、山下 広之3、吉村 宏4、佐藤 英治1、高根 浩1 (1. 福山大学薬学部 (日本)、2. 石川県立看護大学 (日本)、3. 東邦薬品株式会社 (日本)、4. 株式会社ヴェーゼン (日本))
【背景と目的】保険薬局では、患者の薬物療法の管理が長期間に及び複数の薬剤師が関与することから、薬剤服用歴(薬歴)が薬学的管理に重要な役割を担っている。薬歴の効果的な活用のためには、医薬品の知識習得に加えて実践経験の蓄積も求められる。薬学生は、薬局実務実習の早期から薬歴により患者情報や薬物療法の経過を把握して服薬指導を行い、自身も薬歴を記載することとされている。そのため、大学では薬歴を活用した薬学的管理に関する教育が実施されているが、薬局実習に繋がる学習方法が構築されているとは言い難い。我々は臨床準備教育の成果や授業効率の向上のために、教育用の電子薬歴が必要と判断し、薬学生および薬局薬剤師の学習資材としての電子薬歴ソフトとその活用方法の開発を進めている。
【方法】1)「教育用に特化した電子薬歴ソフト(本ソフト)の開発」SOAP形式の薬歴や患者基本情報を入力する画面に加え、演習課題の閲覧と回答提出用の機能を設置し、レポート課題等の提出も薬歴ソフト内で完結できる仕様とした。併せて、小グループ討論(SGD)に用いるホワイトボード機能を搭載させた。2)「臨床準備教育への試験的導入」症例検討のシナリオを複数作成し、①授業(1コマ;90分間)、②授業(2コマ)、③SGDによる症例検討(3コマ×4日間)、および④SGDによる在宅医療演習(4コマ)の場面で本ソフトを試用した。
【結果】①は新規に作成したプログラムで、②~④は福山大学で実施してきた授業や演習に本ソフトを適用した。②~④の全てにおいて、紙媒体の演習と同様の内容が実施可能であるとともに、提出物の管理が簡素化できることが示された。②では、先行研究における市販の電子薬歴を用いた演習の結果と比較したところ、実施フローの簡略化や人的資源・実施時間の削減が達成できた。①は、3年生後期(3年生群)と共用試験終了後の学生(4年生群)の授業で実践した。課題の一つとしたSOAP薬歴の記載内容について両群の結果を比較したところ、A(Assessment)およびP(Plan)において、4年生群の結果が有意に優れていることが示された。
【今後の計画】本ソフトは構築中の段階にある。今後はオンライン演習への導入、教員等が課題の入力や提出データの抽出ができる管理者機能の追加、学習者の振り返りを促すパーソナルポートフォリオの運用等を予定している。