講演情報

[P067]健康食品による健康被害の歴史と課題

【発表者】武智 万由子1、横田 惠理子1、大江 知之1 (1. 慶應義塾大学薬学部 (日本))
【目的】近年、健康志向の高まりに伴い健康食品市場が急速に拡大している一方で、健康被害の報告も増加している。また、薬局での実務実習において、多くの患者が処方薬と健康食品を併用している実態を知り、中には健康食品の相互作用や処方薬との飲み合わせに関する知識が不足していると思われる患者もいた。本研究では、健康食品の歴史と社会的背景を整理し、過去の健康被害事例およびその原因を分析すること、また、薬学実務実習における健康食品と医薬品の併用に関する情報提供の実態や、大学での学びとの関係を明らかにすることを目的とする。
【方法】公的機関が公表する健康被害事例を中心に、文献調査および過去のデータ分析を行った。さらに、2025年度に慶應義塾大学薬学部に在籍する5年生のうち、I〜III期に実務実習を経験した学生を対象に、無記名による自記式質問紙調査を実施する予定である。質問項目は、実習中に対応した患者の健康食品使用の有無、薬剤師による情報提供の実施状況、大学での学習内容との相違点や実習を通じて感じた課題、健康食品に対する自身の認識などで構成される。アンケート結果については、選択式設問については単純集計により、自由記述項目については混合研究法により解析する。
【結果と考察】調査の結果、過去に報告された健康被害事例には共通する要因が認められた。具体的には、医薬品成分や有害物質の混入、不適切な使用法、リスクの高い利用者による使用、医薬品や他の健康食品との相互作用、さらに広告や口コミに基づく誤った自己判断などが挙げられる。このことから、健康食品による健康被害の多くは、消費者自身の知識や認識の不足が要因の一つであると考えられる。そのため薬剤師には、医薬品だけでなく健康食品についても確かな情報や専門的知見をもとに、安全性や有効性を患者・消費者に適切に指導する役割が求められる。アンケート調査を通じて、薬学生が実務実習で経験した健康食品に関する対応の実態を明らかにし、課題を可視化する。