講演情報

[P079]第110回薬剤師国家試験を化学の目で見てみたら

【発表者】中山 拓1 (1. 東邦大学薬学部 (日本))
【目的】
薬剤師国家試験において「物理・化学・生物」のいわゆる基礎科目と呼ばれる3つの科目は多くの受験生にとって得点源ではない。それは、問題の難易度に加えて、問題数が他科目に比べて少ない20問であることも関係すると考えられる。しかし、基礎科目の知識では本当に20点しか得点できないのだろうか。演者はそこに疑問を覚えた。昨今の薬学教育の現場では様々なところで「暗記ではなく理解が大切」や「科目横断的な知識の応用」のような言葉をよく耳にする。これらこそ正に根本的な事象や事柄を扱う基礎科目の出番であろう。そこで、今回は基礎科目の中でも化学にフォーカスして第110回薬剤師国家試験を視ることとし、基礎科目の重要性及び「理解」とは何かを改めて考えることとした。

【方法・結果】
第110回薬剤師国家試験の全345問のうち、化学を除いた325問の中で構造式が登場する問題及び化学の知識を利用して正誤を判断できる選択肢を含む問題の数をカウントした。
必須では12問、理論では13問、実践では20問がそれぞれ化学の知識が利用可能であり、そこに化学の出題数を合わせると、
必須:17/90(18.9%) 理論:23/105(21.9%) 実践:25/150(16.7%) 総数:65/345(18.8%) という結果が得られた。
構造式が問題中に登場した領域は「物理」「化学」「生物」「衛生」「薬理」の5領域であった。

【結論】
約20%の問題で化学が役に立つという結果から、薬剤師国家試験においては基礎科目の重要性、”基礎科目の視点”で物事をとらえる重要性が高いことが分かった。
構造式が問題位中に登場した領域は今回の国家試験では上記に示した5領域だったが、第103回薬剤師国家試験以降、薬剤、実務においても構造式が登場しており、また医薬品の薬効や代謝経路などの特徴も構造に起因することから薬剤師と構造式、化学は切っても切り離せないものであることが改めて明らかとなった。