講演情報

[P081]卒業研究に関連付けた共通演習の実施と薬剤師国家試験の成績への波及効果

【発表者】高橋 達雄1,2、鍛治 聡1、要 衛1、佐藤 友紀1、高野 克彦1、野村 政明1 (1. 北陸大学薬学部 (日本)、2. 北陸大学ウェルビーイングリサーチチーム (日本))
【目的】薬学教育モデル・コア・カリキュラム(平成25年度改訂)では、「薬学研究」は薬学的思考に基づく科学的な問題解決能力を育成するための学修要素と位置づけられている。これは、将来薬剤師が医療・福祉の現場で遭遇する複雑かつ多面的な課題に対して、論理的かつ協働的に対応するための基盤であり、薬剤師国家試験においても実践的応用力が問われる傾向が強まっている。そこで本学では、薬学研究に関連するコンピテンシー(3-1:対話を通じた信頼関係の構築、6-1:課題解決への主体的行動、6-2:後輩等への適切な指導)の学修機会を提供する目的で2023年度より「共通演習」を6年次生全員に対して導入した。
【方法】本演習は、薬学・医療に関する課題に対し、対話を通じて自己及び他者と解決に向けて共働することで個々の対応力を養うことを学修目標として、週1回の講義、確認テスト及び応用課題へのグループワークで構成される。課題解決に向けた議論を通じて、全学生が主体的に内容を理解し、課題に対応できることを目指す。教員による口頭試問によってコンピテンシー3-1と6-2の達成を評価し、確認テストによってコンピテンシー6-1を評価した。
【結果と考察】コンピテンシー3-1と6-2の達成率は、2023年度では90.1%、2024年度では98.9%といずれも高く、学修目標の達成が確認された。確認テストの得点率は2023年度では79.1%、2024年度では81.2%であった。さらに、共通演習の実施期間(5月~7月)の前後における実力試験の得点率の推移においても、共通演習未実施の2022年度にみられた得点率低下が緩和され、学修の継続性と定着が向上したことが示された。加えて、薬剤師国家試験合格率(新卒)も、2022年度の58.3%から2023年度は75.0%、2024年度は75.3%へと大幅に改善した。本発表では、共通演習の設計と運用、ならびにその教育効果を定量的に評価した結果について報告する。