講演情報
[P113]PROGのリテラシーレベルおよび受験状況と学業成績・修学状況との関係
【発表者】永井 純子1、富永 大介2、越前 宏俊3 (1. 明治薬科大学 IR室、2. 明治薬科大学 薬学教育センター 数理科学部門 生命情報科学研究室、3. 明治薬科大学 学長)
【背景・目的】近年、大学生の読解力低下による学業不振が問題視されている。本学では読解力を直接測定するテストは実施していないが、新たなテストの導入には学生の負担増が懸念される。本学1年生全員が受験するジェネリックスキルを測定するテストであるPROGにおいて、リテラシーを構成する6要素のうち「情報分析力」、「言語処理能力」、「非言語処理能力」は読解力に近い能力であると考えられる。また、PROGの受験状況データ(解答ステータスや解答時間など)は、大学の成績と直接関係のないテストを受験し限られた時間内で問題文を読み解答する行為の記録であり、課題へ取り組む姿勢や読解力を間接的に示している可能性がある。そこで本研究では、PROGのリテラシーレベルおよび受験状況データと、学生の学業成績・修学状況との関係を分析し、支援が必要な学生の抽出に活用できるか検討した。【方法】2020~2023年度に本学へ入学した学部生を対象に、各種データを整理・統合して分析を実施した。PROGのデータとして、リテラシーの6要素の各レベル、解答ステータス(解答完了・途中終了・未開始)、解答時間を用いた。なお、受験しなかった学生は解答ステータスに「受験なし」を登録し、4水準として分析した。成績データは1年次終了時の成績を、修学状況データは2024年4月時点での留年および離籍(退学・除籍)の有無を使用した。本研究は明治薬科大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。【結果・考察】1597名の学業成績・修学状況のデータが得られ、このうち95%の学生がPROGを受験していた。リテラシーレベルに対して成績は統計学的に有意な正の増加傾向が認められたが、修学状況との間には明確な関連は認められなかった。解答ステータスの分析では、「受験なし」群は他の群と比較して成績が有意に低く、留年・離籍の発生が多い傾向であった。また、解答時間と成績・修学状況との間には統計学的に有意な関連が一部で認められたものの、実務的に意義のある示唆を得るには至らなかった。以上より、PROGのリテラシーレベル自体は成績や修学状況との明確な関連を示すものではなかったが、解答ステータスは支援が必要な学生を抽出する手がかりとして有効である可能性が示唆された。今後は、該当する学生に対する成績の向上や離籍防止を目的とした支援のあり方を検討していきたい。