講演情報

[P121]少人数型演習科目で薬用植物園を活用した学習効果

【発表者】西山 由美1 (1. 神戸薬科大学 薬用植物園 (日本))
【目的】近年、論理的に考えるなど思考力の醸成や答えのない課題に取り組む力を養う学習が重要視されるようになってきた。本学では、幅広い知識に加え、特に科学的な思考力や他者との協調を養うために、学年横断型・少人数で行うロジカル思考演習が開講されており、担当教員は独自に演習内容を考案することができる。一方、薬系大学の植物園は、学生の教育や研究での活用を第1の目的として設置されているものの、教育においては、あまり活用できていない現状がある。そこで本演習において、植物・生薬の知識の習得とさらにコミュニケーション力の向上を主たる目的として、植物園を活用した課題を考案し実施している。今回はその学習効果について検討したので報告する。【方法】課題は「薬用植物園に行きたくなるプレゼンテーション」で、4人のグループで取り組むものである。最初に、薬用植物園をよく知るために、クイズを解きながら園内を見学するクイズラリー見学を行う。クイズは植物だけでなく生薬に関するものを含め、園内全体を網羅できるように園内各所に配置した。また、さまざまな難易度のクイズを準備し、グループ内での会話を増やしコミュニケーションを取りやすい状況を作った。さらに、植物園スタッフに声をかけて園の魅力を尋ねるなど、インタビュー形式も積極的に取り入れるように伝えた。そして、プレゼンテーションが終わってから、今回の課題に関するアンケートを実施し学習効果を検討した。【結果・考察】アンケート調査により、クイズラリー見学には楽しく参加できたことがわかった。今回の課題を通して、植物園のことがよくわかり、また植物や生薬を身近に感じ、より関心を持ったとの回答も多くあった。クイズラリー見学の準備は時間を要するが、興味・関心を持つことは、自己学習による知識の向上にも繋がるので、一定の学習効果があったと考えている。一方、コミュニケーションについては、約5割の学生が、役に立ったと回答した。ほぼ初対面のグループメンバーで話し合いを始めるには慣れるまでに時間がかかるものだが、クイズを解くという共通の目標を持つことで、学年を問わず、自然に会話ができたものと思われる。その後の発表準備においても、意見を出しての話し合いがスムーズに行えたことが伺えた。このような形での植物園の利用は、知識の習得だけでなくコミュニケーションにも大いに役立つと考えられた。