講演情報

[P125]薬学部における統合医療教育の現状と課題

【発表者】田崎 岳1、横田 惠理子1、大江 知之1 (1. 慶應義塾大学薬学部 (日本))
【目的】患者中心の医療の重要性が高まる中で、近代西洋医学を前提としつつ、これに補完・代替療法や伝統医学等を組み合わせた「統合医療」への関心は高まっていると考えられる。しかし統合医療には科学的根拠が不足しているなど課題も多い。本研究では、主として薬学教育における統合医療に関する教育の実態を調べ、必要性を検討する。【方法】国内の薬学部における統合医療教育の実施状況の把握・比較のために、各大学のウェブサイトに公開されているシラバス、ディプロマポリシーを調査し、統合医療や補完・代替医療に関する授業科目の有無や内容を分析した。「統合医療」「民間療法」「代替医療」「補完療法」「代替療法」「伝統医学」などのキーワードを用いて検索を行い、授業の実施学年、実施形態、授業内容を比較検討した。【結果】全国82校の薬学部を対象に調査した結果、「統合医療」「補完医療」「代替医療」「東洋医学」「民間療法」といった統合医療を直接示唆するキーワードが講義名や内容に含まれていたものは22校(26.8%)、24講義、その中でも「統合医療」が含まれていたものは9校(11.0%)、9講義にとどまった。また、キーワードが含まれた講義の中で必修科目は7科目、選択科目は3科目、選択必修科目は3科目、不明のものが11科目となった。なお、いくつかの大学では、漢方医学を基盤に伝統医学の視点を取り入れた授業が見られたものの、それらも主に薬効や作用機序の解説にとどまり、患者中心の医療や多職種連携といった統合医療の理念を明確に反映した内容は少なかった。また、統合医療についての文献調査を行う中で、立場によって「統合医療」のとらえ方が異なっていることが分かった。
【考察と結論】本研究から、薬学部における統合医療の教育体制は十分に整っていないと考えられた。医療チームの一員として患者の価値観に寄り添った適切な情報提供を行うために、補完・代替医療を含む多様な選択肢について、科学的根拠に基づいた知識と批判的思考を養う教育が必要と考えられる。今後の研究の方針として、他の医療系学部の教育内容についてシラバスをもとに調査し、統合医療教育の現状について検討する。また、「統合医療」のとらえ方について、各機関によってどのような違いがあるのかについて調査し、それぞれの妥当性について検討する。