講演情報

[P008]薬剤師に求められる基本的な資質・能力と社会人基礎力の関連性:薬学生の共感度調査

【発表者】末吉 夢大1、村上 美咲1、島﨑 裕也1、大滝 駿1、田島 かおり1、松元 一明2、中嶋 幹郎3、友松 里枝1、相木 良介1 (1. 株式会社マイナビ メディカル事業本部 キャリア開発支援統括本部 (日本)、2. 慶應義塾大学 薬学部 (日本)、3. 長崎大学 薬学部 (日本))
【目的】令和4年度改訂版薬学教育モデル・コア・カリキュラムでは、大項目Aに「薬剤師に求められる基本的な資質・能力(以下、10の資質)」が示されている。一方、経済産業省は2006年から「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として12の能力要素から構成される社会人基礎力を提唱している。(株)マイナビは、この社会人基礎力を学生が測定できる「MATCH plus」というアセスメントツールを提供することを通して学生のキャリア形成を支援している。薬学部の学生にとっての生涯の目標である10の資質は、経済産業省が提唱する社会人基礎力の概念とは異なるが、我々は相互の関連性に着目した。そこで本研究では、社会人基礎力を高めることが10の資質の向上にも繋がることを示し、教育現場における実践的活用が期待できる薬学生向け教材を開発することを目的に、我々が提唱する10の資質と社会人基礎力の関連性について薬学生がどの程度共感するかを調査・解析したので報告する。【方法】共同研究者内で、10の資質各々に関連する社会人基礎力の12の能力要素を提案した。次に2024年11月から2025年5月にかけて、長崎大学および慶應義塾大学の薬学部4年生および5年生を対象に共感度に関するアンケート調査を実施した。調査は全て対面で概要を説明した後、WEBフォームを用いて回答を収集した。有効回答数は220件であった。【結果・考察】我々が提唱した10の資質と社会人基礎力の関連性の約8割にあたる27項目について90%以上の高い共感度が得られた。特に10の資質の「コミュニケーション能力」と社会人基礎力の「傾聴力」が関連するという我々の提唱に対する共感度は100%であった。一方で10の資質の「情報・科学技術を活かす能力」と「生涯にわたって共に学ぶ姿勢」に関連する社会人基礎力においては共感度にばらつきが見られた。本調査の結果から、10の資質と社会人基礎力の関連性について薬学生が高い共感度を示すことが明らかになった。このことは、上述のMATCH plusを活用し社会人基礎力を測定することを通して、薬学生は10の資質を意識的に捉えることができることを示唆している。今後は、薬学生がこれらの関連性を具体的に理解し、キャリア形成の実践を通して自らの資質を向上し成長できるよう支援していきたい。