講演情報

[P012]OTC緊急避妊薬購入における消費者意識
~薬剤師への求めに関する質的研究~

【発表者】山崎 沙帆1、桐山 夏実希1、杉田 奈々葉1、竹平 理恵子1、正村 優子1、中村 洋2、寺島 朝子3、有田 悦子1 (1. 北里大学薬学部 (日本)、2. 城西国際大学薬学部 (日本)、3. 湘南医療大学薬学部 (日本))
【目的】令和5年より、一部の薬局でOTCの緊急避妊薬(ECP:Emergency contraceptive pills)の試験販売が開始された。OTC販売における薬剤師側の懸念等についての報告はあるが、消費者側が薬剤師にどのような対応を期待しているかは十分に調査されていない。本研究では、消費者がOTCのECPを購入する際に薬剤師に求めることを調査し、薬剤師の対応について検討した。
【方法】ECPを服用した経験がある女性(125名)と、パートナーにECP服用経験がある男性(125名)を対象に、無記名式のWebアンケートを実施した。薬局でOTCのECPを購入する場面を想定し、“薬剤師に求めること”について自由記述で回答を得た。得られたデータは、性別ごとにSCAT(Steps for Coding and Theorization)で質的に分析した。
【結果】女性では、観点「購入者への配慮あるコミュニケーション」において、薬剤師の親身なコミュニケーションにより安心感を得ると、薬剤師を信頼できると認識することが示された。観点「不必要な詮索への拒否」において、ECPを服用することへの羞恥心から、必要以上の踏み込んだ会話に対する抵抗感が示された。観点「服用により予想される症状への不安の払拭」において、服用における安心感を得るため、緊急時の対応や援助に関する説明を求めることが示された。男性では、観点「パートナーの安全な服用サポート」において、パートナーに及ぼす影響への不安やパートナーをサポートしたい思いが示された。
【考察】女性との良好な信頼関係構築のために、薬剤師には親身な対応が求められることが明らかとなった。薬剤師は、ECPを服用する女性が持つ羞恥心を念頭に置き、会話への抵抗感を考慮した上で情報収集を行う必要性が示唆された。また、ECP服用に関する不安は女性だけでなく、実際に服用しない男性にも存在することが明らかとなった。男性は、ECPにより女性に生じる体調変化等への不安を抱えていることから、ECP服用後に予想される症状や緊急時の対応等の情報提供は男性にも必要になると考えられた。以上より、薬剤師は、消費者に安心してECPを使用してもらうために、消費者心理に着目し一人一人の求めに合わせた臨機応変な対応が重要だと考えられた。