講演情報

[P018]薬学部生を対象とした「価値観」尺度の開発および評価

【発表者】和田 悠佑1、鹿島田 和大1、横田 恵理子1、大江 知之1 (1. 慶應義塾大学 薬学部 (日本))
【目的】薬学生には「高い倫理観」およびコミュニケーション能力の形成が求められている。低学年次から自身の考え方の偏りや行動の癖を自覚し内省することは、「倫理観」を理解し、何をどのように学び、身につけていくか考えるうえで重要である。本研究は学生が自身の物事の捉え方・考え方の偏りや特徴を認識し、薬学部生が目指すべき能力について考えるきっかけとなるような尺度の開発を目的とする。
【方法】令和4年度版薬学モデル・コア・カリキュラムの「薬剤師として求められる資質・能力」および本学の「倫理・コミュニケーションに係る学習目標到達度確認のためのルーブリック評価」、「倫理観」から連想される概念をKJ法で抽出した。抽出した概念を整理し、[自律性] [責任感] [正義感] [公平性] [向社会性] [コミュニケーション] [協調性] [尊重] [共感性]の9つを「価値観」を構成する概念とし、各概念につき3~5つの質問項目を作成した。本学部に在籍する1年生および4~6年生を対象として質問紙調査をGoogleフォーム上にて行った。「価値観」尺度は5件法で行い、質問項目の分かりやすさ、回答のしやすさ、感想などを記入する項目を自由記述で設定した。また、「価値観」尺度の妥当性検討のため、コミュニケーション・スキル尺度で広く使用されているENDCOREsを比較尺度として使用した。
【結果と考察】回答者は1年生13名、4~6年生17名であった。質問項目全32項目中15項目に天井効果が見られたが、各概念ごとに集計して検討した場合には天井効果が見られなかった。また、信頼性係数の推定値は、折半法で0.65、クロンバックのα係数では0.51であった。また、比較尺度との相関に関しては、「価値観」尺度の[自立性]、[責任感]はENDCOREsの[自己統制]とやや正の相関(r=0.54,r=0.55)を示し、[コミュニケーション]はENDCOREsの[自己主張]と有意な相関(r=0.65)を示し、[協調性]がENDCOREsの[他者受容]、[関係調整]とやや正の相関を示した(r=0.59,r=0.53)。
【結論】今回の予備調査により基本となる尺度が作成されたと考えられる。しかし、半数ほどの項目で天井効果が見られたため、今後は各質問項目のブラッシュアップと再度の調査および信頼性・妥当性の再評価を行う。