講演情報

[P020]実習初期の省察能力に着目した実務実習生のプロフェッショナリズム向上を目指した教育的介入のための新たな示唆

【発表者】梅田 小梅1、榎本 光晴1、小林 聡太2、野々宮 菜彌2、金沢 和幸2、川島 沙織2、地引 綾1、横山 雄太1、野々宮 悠真1、津田 壮一郎2、大谷 壽一2,3,4、中村 智徳1、鈴木 小夜1 (1. 慶應義塾大学薬学部 医療薬学・社会連携センター 医療薬学部門 (日本)、2. 慶應義塾大学病院 薬剤部 (日本)、3. 慶應義塾大学 薬学部 臨床薬学講座 (日本)、4. 慶應義塾大学 医学部 病院薬剤学教室 (日本))
【背景・目的】我々はこれまでに、4領域24項目から成る4段階のプロフェッショナリズム評価ツールProfessionalism Mini-Evaluation Exercise(P-MEX)を薬学実務実習生に適用し、評価の妥当性、省察能力が要改善課題であること、Significant Event Analysis(SEA)により省察能力が実務実習中に向上することを示した(第5~8回日本薬学教育学会大会)。本研究ではSEAによる実務実習生の省察能力と、P‑MEXにより評価・観察可能なプロフェッショナリズムとの関連を明らかにする。
【方法】2022年度Ⅲ期~2024年度II期慶應義塾大学病院実習生のうち同意が得られた28名に対し、P-MEXによる他者評価を実習初期・後期に実施し、評価者による全項目の平均値をプロフェッショナリズムとして評価し、妥当性検証後に解析に供した。SEAによる実習中の出来事についての振り返りを初期・中期・後期に実施し、教員及び6年生(計4名)によりO`Sullivan Methodを用いて省察の深さ[0(浅)~6(深)]を評価した。実習生の省察能力と実習終了時に到達するプロフェッショナリズムとの関係を明らかにするため、実習初期・後期それぞれの省察の深さと実習後期P-MEXスコアの「3(ほぼ期待通り)」への到達割合及び相関性について評価した。
【結果・考察】SEAの実習初期の省察の深さは「3以上4未満」が最も多く(54%)、初期、後期の省察の深さが3以上の実習生で後期P-MEXスコアが基準に到達した割合はそれぞれ53%、48%と、実習期間中にプロフェッショナリズムが目標基準に到達する割合は半数程度であった。一方、初期、後期の省察の深さが3未満の実習生の基準到達割合はそれぞれ18%、14%であり、基準未到達実習生におけるP-MEXスコアに対する省察の深さの寄与率は14%であった。
 以上より、実習初期の省察能力の違いが実務実習で到達するプロフェッショナリズムに影響する可能性が示され、実習生のプロフェッショナリズム向上には省察能力向上のみでは不十分であり、他のプロフェッショナリズムに関わる因子向上も目指した教育が必要と考えられる。これらは実習開始時の省察能力に基づく教育的介入がプロフェッショナリズム向上に寄与する可能性を示唆する重要な基礎的知見と考える。