講演情報

[P028]教員による呼称を用いたコミュニケーションが薬学生の孤独感低減に及ぼす効果

【発表者】今野 亮1、長久保 大樹1、小宮 希流1、髙部 厳輝1,2 (1. 明治薬科大学 (日本)、2. 明治大学 (日本))
【目的】
薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)において,「薬剤師として求められる基本的な資質・能力」10項目の一つに『コミュニケーション能力』が掲げられおり,コミュニケーションの重要性が示されている.大学教育においては,コミュニケーションスキル(以下「CS」と略す)向上について体育授業がその要因の一つとして認められており,これまで多くの報告がなされている.薬学生に関しては,コミュニケーションにおいて呼称を用いた体育授業によるCSの向上が報告されている(今野ほか,2025).その中で,体育授業におけるコミュニケーションの発端は教員であることから,教員による呼称は学生のCS向上において重要な要因ということができる.一方で,CSが高いほど友人関係が良好であり,CSは孤独感と負の相関が認められている(牧野,2013).そこで本研究の目的は,体育授業において教員による呼称を用いたコミュニケーションが薬学生の孤独感低減に及ぼす効果を検討することとした.
【方法】
対象者は,薬学部1年361名であった.調査内容は,教員による呼称の有効性(以下「教員による呼称」と略す),学生による呼称の有効性(以下「学生による呼称」と略す),呼称の意思,改訂版UCLA孤独感尺度短縮版(Igarashi, 2019)であった.調査は,筆者らが担当する体育授業終了後に行われた.分析は,従属変数を孤独感尺度として繰り返し重回帰分析を行い(ステップワイズ法),そこで得られた結果から有意なパスを抽出してパスモデルを作成し,共分散構造分析を行った.
【結果,及び考察】
教員による呼称が孤独感低減に及ぼす効果を明らかにするために,全項目における重回帰分析によって得られた因果関係を用いてパスモデルを作成し,性別に共分散構造分析を行った.モデルの適合度は,男子はCFI=1.000,GFI=1.000,AGFI=1.000,RMSEA=.000,女子はCFI=.998,GFI=.997,AGFI=.973,RMSEA=.036であり,良好であると判断した.また,教員による呼称から孤独感に対する直接効果,学生による呼称と呼称の意思を介した間接効果,総合効果においてそれぞれ負のパスが示されたことにより,体育授業において教員による呼称を用いたコミュニケーションは薬学生の孤独感を低減させることが明らかになった.