講演情報

[P042]通常授業科目における演習導入が薬学生の学習方略に与える影響

【発表者】河合 洋1、阿久津 裕士1、古旗 賢二1、小島 裕1、高橋 直仁1、関 俊暢1 (1. 城西大学薬学部 (日本))
【目的】学習効果は学習者が用いた学習方略によって影響される。薬学生についても、意味理解を志向した深い認知処理方略が学力向上に有効であること、成績不良者は暗記等の浅い認知処理方略の使用傾向が強いことが報告されている。今回、授業における教授手法が学生の学習方略に及ぼす影響を探るため、演習を多用している授業における学習方略を測定し、普段の学習と比べた学習方略使用傾向の変化を解析した。
【方法】城西大学薬学部薬学科3年次科目の受講学生を対象とし、化学系、栄養系、衛生系の計4つの授業での学習方略を調査した。学習方略は4件法19項目の質問紙により測定し、全体把握方略、日常活用方略、知識構造化方略、暗記方略の使用傾向をスコア化した。年度初期に普段の学習における学習方略を、各授業終了時にその授業における学習方略を測定した。普段の学習と授業時の学習の両方に回答がある者のうち、研究利用に同意した215人の回答を解析に用いた。
【結果と考察】対象授業受講前の年度初期に調査した「普段の学習における学習方略」のスコアは、全体把握方略2.98、日常活用方略2.39、知識構造化方略2.84、暗記方略2.69であった。深い認知処理方略(全体把握、知識構造化)のスコアが比較的高く、浅い認知処理方略(暗記)のスコアが低いという傾向は過去の報告と一致する。演習多用授業3つの「その授業における学習方略」は、「普段の学習における学習方略」と比べて、全体把握方略と知識構造化方略は高く暗記方略は低くなっていた。また、同一教員が実施した演習多用授業(反転授業、TBL)と演習割合の低い授業における学習方略を比較すると、演習多用授業の方が知識構造化方略は高く暗記方略は低くなっていた。授業における演習の導入は、学生の学習方略を暗記型から意味理解型に誘導することが示唆される。翌年度初期に再び普段の学習における学習方略を調査したところ、各方略のスコアは受講前に近い値を示し、演習多用授業で認められた変化は減弱/消失していた。知識構造化方略、暗記方略は客観試験成績に正、負の影響を与えることが示されており、授業への演習の導入は学生の学習方略を望ましい方向に誘導するのに有効と考えられる。ただしその効果は一過性で限定的であった。学生の学習の質的転換には、学部教育全体での取り組み、能動的学習への継続的な働きかけが重要と考えられる。