講演情報

[P040]東邦大学薬学部の放射薬品学実習 ―実施の意義と学生の意識アンケート結果―

【発表者】五郎丸(新海) 美智子1、清水 真紀1、黒田 潤1、成末 憲治1、水落 茂樹1、大井 浩明1、竹元 裕明1、根本 清光1、鈴木 紀行1 (1. 東邦大学薬学部)
【背景・目的】
いくつかの放射薬品学の教科書、参考書では、放射性医薬品ガイドラインについての記載があり、放射性医薬品の管理や調製は薬剤師の仕事であると放射薬品学(必修)で教えている。しかしながら、薬学部の設置基準には放射性物質を取り扱う実験設備を設けることは含まれておらず、放射薬品学実習の実施が困難であることは明らかである。東邦大学薬学部では選択科目として当該実習を開講しており、学部生は実習選択者と非選択者の2群に分類されることとなる。これまで、実習を受けることが放射性医薬品の調製作業に対する学部生の意識に影響を与えるかを調査した報告は見当たらないため、本報では、今後の教育に役立てることを目的として、学部生に実施したアンケート結果を解析した。
【方法】
薬学部3年生を対象に、アンケート用紙を配布し、提出場所を用意することで自由意志で参加できる形式をとった。アンケート調査の同意については、個人が特定されない形での集計結果の公表を行う旨、スライド等で表示し口頭で説明を行った。統計はJMP Pro17(SAS Institute Inc., Cary, NC, USA)を用いて、群間の値の比較には カイ2乗検定にて行い、有意水準は5%とした。アンケート回答欄に設けた自由記述欄(コメント)のテキストマイニングには、KH Coder 3 (https://khcoder.net)を用い、共起ネットワーク図の作成や対応分析を行った。
【結果・考察】
回収されたアンケート数の合計は、実習選択者589、非選択者1072であった。放射性医薬品の調製は薬剤師の業務であると思うか、の問いに対し「そう思う」と答えた学生が実習選択者の方が優位に多かった。また将来自分が病院薬剤師になったと仮定した問いに対し、実習選択者の方が放射性医薬品の調製を行うことに抵抗が少なかった。放射性医薬品の調製を行うことに抵抗がある、行いたくないと答えた学生に対しての理由を問うと、実習選択者の方が「放射性物質の取扱いがわからないから」という答えが有意に少なかった。
【結論】
2014年から2023年に開講した選択科目である放射薬品学実習について、アンケート調査を行った結果、実習選択者と非選択者との間で放射性医薬品の取扱いに対する意識に差が認められ、放射性物質を取り扱う実習の実施意義が証明されたと考えられる。