講演情報

[P054]診療所・薬局連携体験による臨床現場での処方監査能力改善の試み

【発表者】土井 光則1,2、羽野 卓三3、太田 茂1、中川 貴之1、大桑 邦稔4 (1. 和歌山県立医科大学薬学部、2. 和歌山県立医科大学附属病院薬剤部、3. 和歌山県立医科大学サテライト診療所、4. 和歌山県薬剤師会)
【目的】
和歌山県立医科大学サテライト診療所本町では、診療所と調剤薬局をシームレスに経験する実習を2019年10月から行っている(日本薬学教育学会誌2021年、5巻)。処方監査は臨床薬剤の重要な業務である。薬学部における処方監査は、薬局実習や病院実習において行われるが、薬剤師の立場での教育が大半である。しかし、現実の医療現場においては、様々な要素が処方計画に影響を与える。そこで、医師がどのような処方意図をもって処方を行っているかを診療所の診察現場で確認し、患者からも話を聞く機会を持つことにより処方意図に関わる個人的、社会的要因を理解し、処方監査の質向上に役立てることを目的とする。
【方法】
和歌山県立医科大学附属病院で実務実習を行っている薬学部学生16名を対象に、病院実習の期間の1日を特別実習として、和歌山県立医科大学サテライト診療所本町で実習を行った。和歌山市、市街地の商業ビルにある診療所および門前薬局である薬剤師会営薬局が連携し、診察室から薬局で薬剤を受け取るまで患者に帯同した。朝9時からオリエンテーションを実施、当日外来を受診する患者の前回処方に対し、診察前に処方監査を実施する。1回目の処方監査では、実際の患者の病名、処方内容から処方監査を行い、処方監査を考える際に重要と考えた項目を列挙した。その後、1回目に処方した患者の実際の診察に同席し、患者の話、医師の説明を聞いた上で2回目の処方監査を行い、処方監査を考える際に重要と考えた項目を再度列挙した。2回の処方監査の後、医師から担当した患者の処方意図に関して説明を受けた。また、処方監査で必要と考えた要因の1回目と2回目の違いについて議論した。
【結果】
通常の実習で獲得している基本的な処方監査の知識に加えて、臨床現場で必要となる患者自身の身体的能力、認知能力、生活習慣、食習慣、治療への意識などの重要性について理解することができた。
【結語】
診療所・薬局連携体験実習により、学生は処方意図を理解し、処方監査の際に必要な患者の生活や意識特性に沿った要素をより考慮する必要性に気付きがみられた。