講演情報

[P064]薬学部における筋肉注射実習の3年間の教育効果と実務実習での活用実態:継続的学習への示唆

【発表者】近藤 福子1、池田 徳典1、中嶋 弥穂子1、内田 友二1 (1. 崇城大学薬学部 (日本))
【目的】本研究は、2022年に報告した筋肉注射実習の成果をもとに実施した続報である。薬学部4年次に行われた筋肉注射実習について、3年間の教育効果を評価した。さらに、5年次の実務実習終了後にアンケート調査を行い、学部での学びが実務実習の現場でどのように活かされたかを検討をした。さらにそれらの結果を踏まえ、学部教育と臨床実習との接続に関する課題を明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は、2021~2023年度に崇城大学薬学部4年次で筋肉注射実習を受講した学生である(376名)。ワクチン接種のためのシミュレータを用いた筋肉注射実習プログラムを実施し、実技、知識、意識の変化を実習前後に評価した。さらに、翌年度に実施される薬局および病院での実務実習終了後、筋肉注射実習で学んだ内容が実務実習の場で活かされたかどうかを問うアンケート調査を実施した。データ分析には、統計解析ソフトEZRを用いた。
【結果と考察】筋肉注射実習前後での実技評価では、実習前から多くの学生が達成できていた2項目を除き、すべての項目で実習後の有意な改善が認められた。知識の平均正答率は、実習前の56.6%から98.2%へと大きく向上した。また、意識面では、実習前に95.9%が「できない」「おそらくできない」と回答していたのに対し、実習後には85.7%が「できる」「おそらくできる」と回答し、自信の向上も明らかであった。一方、実務実習終了後のアンケートでは、薬局実習後に学びが「活かされた」「ある程度活かされた」と回答した学生は3.3%にとどまり「あまり活かされなかった」「全く活かされなかった」は72.3%であった。病院実習後では肯定的な回答が8.6%にやや増加したものの、否定的な回答は63.4%と依然として多かった。ただし、肯定的な意見として、「静脈注射、皮下注射、筋肉注射などの違いについて理解しやすかった」「患者や医師との注射に関する会話がスムーズにできた」といった意見もあり、直接的な実施機会がなくても、チーム医療における理解や関与には一定の効果があったことが伺えた。しかしながら、全体としては臨床現場での筋肉注射実習の活用は限定的であった。今後は知識や技術の定着に加えて、実務実習経験後の学生の意見も参考にしながら、継続的な学びを促す教育的工夫や、実務実習との接続性を意識した仕組みづくりが必要であると考えられる。