講演情報

[SP-1]薬剤師国家試験のあり方について考える―厚生労働行政推進調査事業報告―

小澤 光一郎(安田女子大学薬学部)
〇略歴:
広島大学医学部総合薬学科卒業、同大学大学院医学系研究科博士課程前期修了、同博士課程後期修了、薬学博士、アメリカ合衆国国立衛生研究所(NIH)客員研究員、広島大学助手、同大学講師、同大学大学院医学系研究科教授、同大学薬学部副学部長、同大学副理事、同大学副学長を経て、2025年4月から安田女子大学薬学部教授
平成23年広島県薬剤師会賞,令和3年薬事功労者広島県知事表彰、令和7年広島大学学長表彰
〇本文:
 令和4年度に「薬学教育モデル・コア・コアカリキュラム」が改訂され、令和6年度から同改訂モデル・コア・カリキュラムに基づく薬学教育が実施されている。また、「薬剤師国家試験のあり方に関する基本方針(平成28年2月)」では、薬剤師国家試験で評価すべき基本的な資質を薬学共用試験CBTで代用することについて今後の検討課題とされている。さらに、医療現場における薬剤師の活動領域は近年大幅に拡がっており、薬剤師としての資質を確認するための薬剤師国家試験のあり方も時代のニーズに合わせて適宜改善を図る必要がある。これらのことを踏まえ、社会及び医療現場で活躍する薬剤師像を明確にし、その資質を確認するための薬剤師国家試験について、課題の整理・検討等を行い、薬剤師国家試験と薬学共用試験CBT(以下、薬学CBT)のあり方等に関する見直し方針の基礎資料を作成するために、厚生労働行政推進調査事業「薬剤師国家試験のあり方に関する研究」班が立ち上げられ、令和5、6年度の2年間で検討された。
 薬学CBTによる薬剤師国家試験必須問題の代用性について検討した結果、薬学CBTと薬剤師国家試験では作問方針に違いがあること、薬学CBTは学生が実務実習を受ける資質を確認するためのものであり薬剤師国家試験とは目的も審査基準等も異なっていること、国家試験の必須問題を薬学CBTで代用させた場合、臨床実習などを経て培われた基礎知識を統合して臨床現場での判断ができる能力を測れなくなる恐れがあることなどの理由から、薬学共用試験の公的化とCBTによる国家試験必須問題の代用性とをリンクさせる必然性はないとの結論に至った。
 令和4年度に「薬学教育モデル・コア・コアカリキュラム」が改訂されたが、この改訂での大きな変更点は、「プロセス基盤型教育」から「アウト・カム基盤型教育」へのパラダイムシフトであり、学生の学びと身につける力に変化はあるが、学ぶ内容には変更がないことから、今回の改訂に伴う、国家試験出題範囲の大きな変更は必要ないと考えられる。一方、「デジタル技術・データサイエンス」など、新たな出題範囲の設定は必要である。
 これら以外にも、薬学CBTと薬剤師国家試験に対する勤務薬剤師の意識調査、国家試験の出題範囲、合格基準と禁忌肢の変更などについての検討結果も報告し、参加者の皆様と共に薬剤師国家試験のあり方について考えてみたいと思う。