講演情報

[SS1-1]地域コミュニティーへの薬育教育

原田 美那(帝京平成大学 薬学部)
〇略歴:
帝京平成大学薬学部薬学科・社会薬学教育研究センター・実践地域連携ユニット 助手。2021年に帝京平成大学薬学部を卒業後、同大学大学院薬学研究科博士課程に進学し、現在在学中。第7回日本薬学教育学会大会にて優秀発表賞を受賞。2022年度より学校薬剤師を兼務。学部時代に「薬育」を経験したことを契機に、現在は地域連携部の担当として薬育に携わり、その教育的意義と薬剤師の地域活動に関する研究に取り組んでいる。
〇本文:
 本学では2018年より、教員と有志の学生による「薬育」活動を開始した。「薬育」とは、薬学生が小中学校や高齢者施設等へ赴き、医薬品の適正使用や薬物乱用防止、フレイル予防など、健康な身体をつくるための教育活動である。対象年齢や施設の特性に応じて、学生自身がクイズや実験、劇などを取り入れて構成し、地域住民のヘルスリテラシー向上を図るとともに、薬学生にとっても地域での実践的な学びの機会となっている。
  2021年度以降は、主に薬学部1~4年生で構成される「地域連携部」の学生が中心となり、本学のある中野区をはじめとした地域でも「薬育」を展開している。近年、若年層におけるオーバードーズが社会的課題となる中、教育機関や行政、地域団体からの依頼が増加しており、2021年度から2024年度までの4年間で35件、約3,000名に対して「薬育」を実施した。また、2024年度には、地域の学校薬剤師やライオンズクラブ、保護司会、警察などとも連携し、小学校2校、小中一貫校1校、中学校7校、高校1校、高齢者施設2件で行った。
 さらに2022年度からは、本学薬学部2年生の必修科目である「フレッシュセミナーⅡB」でも「薬育」を取り入れ、学生がグループでスライドを作成し相互に発表を行う形式を実施している。発表会には地域住民にも参加してもらい、学生への評価やフィードバックを通じて、双方向の学びを実現している。また2024年度からは、「薬育」の中に「医療のエコ活動」に関する話題も盛り込み、医療資源の適正な利用や予防医療の重要性について地域住民とともに考える教育も開始した。
 「薬育」を経験した学生への調査では、「コミュニケーション能力」「情報の正確性への意識」「主体的態度」「協働性」が実践力の要素として明らかになり、地域住民の予防に積極的に活動できる薬剤師を養成することに繋がることが示唆された。令和4年度改訂薬学教育モデル・コア・カリキュラムにおいても、保健知識の普及・啓発活動を通じて公衆衛生の向上に寄与する実践力の育成が求められており、「薬育」はその実践の場として有効であると考える。
 本発表では、地域コミュニティーにおける「薬育」活動の実践例とその教育的意義を報告し、今後の継続的な実践と地域連携体制の構築に向けた展望について考察する。