講演情報

[SS1-4]中野区における地域包括ケアシステムの取組と健幸(ウェルネス)のまちづくりについて

酒井 直人 (東京都中野区 区長)
〇略歴:
1971年 岐阜県生まれ
1996年 早稲田大学大学院法学研究科終了
1996年 中野区に入区し、広報担当副参事、地域包括ケア推進担当副参事等を歴任
2018年 中野区を退職
2018年6月 中野区長に就任、現在2期目。在職中から、自治体の改善運動を全国で支援するネットワーク「K-NET」を立ち上げ、まちの清掃ボランティア等にも意欲的に参加。第1回中野区検定1級、中野区ものしり博士号取得。
〇本文:
 地域包括ケアシステムとは、「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される」体制であり、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、各自治体で地域の特性・実情に応じた構築が進められてきた。
 中野区では、平成29年3月に「中野区地域包括ケアシステム推進プラン」を、令和4年3月に「中野区地域包括ケア総合アクションプラン」を策定、また、中野区基本計画における重点プロジェクトの一つに「地域包括ケア体制の実現」を掲げ、行政や関係機関、地域住民等が参加して地域の課題を議論する「地域ケア会議」や医療介護情報連携システム「なかのメディ・ケアネット」の構築・運用などに取り組んできた。
 2025年を迎え後期高齢者の人口割合が高まり、団塊ジュニア世代が65歳となる2040年には高齢者のほぼ7人に1人が認知症に、MCI(軽度認知障害)と合わせると3人に1人が認知機能低下になると言われている。また、一人暮らし高齢者や高齢者のみ世帯の増加が見込まれており、介護予防や認知症予防とともに、地域における日々の見守り体制の強化が必要である。
 この間、医療・介護連携や複雑化・複合化したケースの対応など、ハイリスク・アプローチを重視して地域包括ケア体制を構築してきたが、今後は健康無関心層、生活習慣病予備群などに対するポピュレーション・アプローチや環境づくりなど、健康・介護の予防に力点を置いた施策展開が求められている。
 健幸(ウェルネス)※のまちづくりである「スマートウェルネスシティ」は、地域や環境改善による「0次予防」を目指し、ヘルスリテラシーの向上やソーシャルキャピタルの醸成、歩きたくなる魅力あるユニバーサルデザインのまちづくりを推進する考え方である。取組事例の一つ、中野区役所内のオープンスペースを活用し、民間企業等の協力を得て開催している健康に関する見本市、「中野健幸どまんなか市」は、来場をきっかけに医療機関への受診や運動を始めるなどの行動変容につながったとの報告もされている。こうした区民の健康度と幸福度の高める「スマートウェルネスシティ」を、民間企業や大学等との連携・協働によって進めていく。
 ※健幸=ウェルネス:個々人が健康かつ生きがいを持ち、安心安全で豊かな生活を営むことができる状態