講演情報

[SY1-2]前文が語るコアカリの真意

大久保 正人(千葉大学医学部附属病院)
〇略歴:
2002年 3月 共立薬科大学薬学部 卒業
2004年 3月 共立薬科大学大学院薬学研究科 博士前期課程 修了
2004年 4月 千葉大学医学部附属病院 薬剤部 入職
2013年 4月 千葉大学大学院 薬学研究院 助教
2018年 4月 千葉大学医学部附属病院 薬剤部 調剤室長
2021年10月 文部科学省 高等教育局医学教育課 薬学教育専門官
2024年 4月 千葉大学医学部附属病院 薬剤部 副薬剤部長
〇本文:
 薬学教育モデルコア・カリキュラム(以下、コアカリ)は6年制の薬学教育の開始に向けて平成14年度に初めて制定されたものであるが、平成25年度の改訂を経て、令和4年度に2度目の改訂がされた。コアカリの改訂に対応して、「薬学実務実習に関するガイドライン」も令和5年度に改訂され名称が「臨床における実務実習に関するガイドライン」に改められた。
 新しいコアカリやガイドラインを手にすると、どこを読むだろうか。自分の専門領域の記載が一番の関心事あり、さらに、大学の教員であれば担当する授業に関する<学習事項>だろうか(本当は<学習目標>を見て欲しいところ)。実務実習の指導にあたる薬剤師であれば、ガイドラインの後半に載っているルーブリックだろうか。いずれも、巻頭に書かれている前文から読み始める方は殆どいないのではないか。
 なお、コアカリの<学修事項>は「学生が<学修目標>に到達するために必要と考えられる知識や技能、行為等(中略)参考となる事項を列記したもので、これらだけを修得すればよいということを意味するものではない。」としている。「木を見て森を見ず」という諺があり、物事の細かい部分にこだわりすぎると本質や全体像を見落としてしまうことの例えで用いられる。コアカリの<学修事項>だけ見てしまうと、コアカリの森の中で、一本一本の木を見ていることになる。指導する側が樹海の中を彷徨っていては学生を導くことは難しい。視点を森全体へシフトすることが大切である。
 新しいコアカリの前文は、大きく「コアカリの考え方」と「コアカリ改訂の概要」で構成される。前者は、コアカリ改訂の背景や位置づけの説明とともに、臨床実習をはじめとして薬学教育に携わる関係者や薬学生に向けたことが書かれている。コアカリを最も活用するのは薬学教員であるが、一方で、コアカリには広く国民に向けて薬学教育を説明し、国民の健康な生活の確保に寄与する人材の輩出すること示すメッセージという性質もある。後者には、コアカリの構成(<学習目標>や<学習事項>の説明など)と各領域の改訂の意図が主に示されている。
 今回シンポジウムでは、コアカリを改訂の検討のプロセスを振り返り、その時の想いを込めた前文について記載内容に着目しコアカリの目指すものを改めて考えていきたい。