講演情報

[SY1-3]薬学教育モデル・コア・カリキュラムに沿った学修の在り方―客観主義から構成主義へー

平田 收正(和歌山県立医科大学薬学部)
〇略歴: 
1982年 京都薬科大学卒業
1987年 大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了(薬学博士)
2006年 大阪大学大学院薬学研究科教授
2015年 大阪大学副理事・総長補佐(グローバル連携オフィス)
2021年 和歌山県立医科大学薬学部教授(現在に至る)
〇本文:
 薬学教育モデル・コア・カリキュラム(コアカリ)は、令和4年度に医学・歯学との同時改訂が行われ、令和6年度入学生から適用された。コアカリの改訂は平成25年度に続いて2回目となるが、今回の改訂では「学修成果基盤型教育に基づいたコアカリの深化を図り、薬学教育の質保証の観点から改革を進めること」を掲げ、生涯に渡って目標とする「薬剤師として求められる基本的な資質・能力」をAと位置づけ、以下B.社会と薬学からG.薬学研究までの大項目によって構成されている。「薬学教育の質保証の観点からの改革」については、これまでの本学会のシンポジウム等で「薬学教育プログラムの内部質保証の在り方」として取り上げてきたところであり、本講演では「学修成果基盤型教育に基づいたコアカリの深化」について、コアカリに沿った学修の在り方について考えてみたい。
 令和2年1月に中教審議大学分科会から出された教学マネジメント指針は、「学修者本位の教育の実現」から始まる。学修者本位の教育では、供給者目線での教育を脱却し学修者目線で教育を捉え直すことにより、「学生自身が目標を明確に意識しつつ主体的に学修に取り組むこと、その成果を自ら適切に評価し、さらに必要な学びに踏み出していく自律的な学修者となること。」を求めている。6年制薬学教育における学修者本位の教育について、供給者目線での教育を「客観主義」、学修者目線での教育を「構成主義」として捉えた場合、「学修成果基盤型教育に基づいたコアカリの深化」を実質化するためには、学修者はどのように学修を行えばよいのだろうか。
 教育における構成主義については、知識は普遍的なものであり伝達・共有が可能とする客観主義と対比させて、これまでに様々な議論や定義がなされている。構成主義を「積極的に獲得した知識を自律的に再構成することにより、新たな認識を構築する。」とし、その再構成・構築に自らを置いた学修環境や他者との積極的な相互作用、さらには自己および他者からの評価が求められるとすると、いわゆるカリキュラムの要素、すなわち、学修目標、方略(学修環境)、評価の在り方が問われることになる。本講演では、このような視点から構成主義に基づいた薬学教育における学修について考え、各大学のカリキュラムの充実に向けた取組みについて議論を進めたい。