講演情報
[SY10-3]自己理解から他者理解へ―薬学教育における人財育成とMBTI®の教育資源化―
伊藤 由香里(クオール株式会社 教育研修本部 人財育成部)

〇略歴:
2024年~クオール株式会社 教育研修本部 人財育成部所属。
日本ファーマシューティカルコミュニケーション学会理事。薬剤師・キャリアコンサルタント(国家資格)・MBTI認定プラクティショナー。慶應義塾大学病院等で臨床後、2008年よりMBTI®を用いたキャリア支援、自己理解・他者理解に従事。共訳『経営心理学 第2版』(E.H.シャイン著)、副監訳『バウンダリーレス・キャリア』(M.B.アーサー・D.M.ルソー監修)。
2024年~クオール株式会社 教育研修本部 人財育成部所属。
日本ファーマシューティカルコミュニケーション学会理事。薬剤師・キャリアコンサルタント(国家資格)・MBTI認定プラクティショナー。慶應義塾大学病院等で臨床後、2008年よりMBTI®を用いたキャリア支援、自己理解・他者理解に従事。共訳『経営心理学 第2版』(E.H.シャイン著)、副監訳『バウンダリーレス・キャリア』(M.B.アーサー・D.M.ルソー監修)。
〇本文:
「自分は●●タイプだからこう」「あの人は●●タイプだからきっとこう」―こうした言葉が、学生の間で自然に交わされる光景が珍しくなくなってきた。心理検査MBTI®(エムビーティーアイ:Myers-Briggs Type Indicator)と誤認されやすい無料のタイプ診断(16Personalities)がSNS等で広がり、自己理解が単なるタイプ分類に還元され、人間関係までもが効率性や相性で語られる風潮がある。だがMBTI®の本質は、そうした“決めつけ”とは本来、対極にある。
MBTI®はユングのタイプ論に基づき、信頼性、妥当性が検証されている国際規格に則って開発された性格検査である。私たちが生まれつきもつ情報の取り入れ方(知覚)や意思決定の方法(判断)について、どちらを自然に優先するかという「心の利き手®」の違いに着目している。MBTI®はその人がその人であるための本質、キャラクターを理解するための類型論を用いたツールであり、MBTI®は検査を受けて終わりではなく、回答結果をきっかけとして、有資格者の支援のもとで自己分析を行うプロセスが重視される。特性論を用いる16Personalitiesとは本質的に異なるものである。
本発表では、支援の質は支援者自身の自己理解の深さによって左右されるという視点から、「自己理解・他者理解」を教育資源として改めて位置づけ、その意義について検討する。教育的価値を十分に活かすためには、支援者が類型を安易に断定せず、特性論的な見方に偏らない柔軟な視座を持つことが求められる。支援者自身が、自らの言動が学生の自己概念や他者理解にどのような影響を及ぼすのかを自覚的に捉えているかどうかが、支援の質に大きく関わると考えられる。対人援助やキャリア形成の基盤として、学生が自己を多面的に捉え、他者との関係性を柔軟に理解していく力を育むために、教育者に期待される姿勢と関与のあり方について議論したい。
今年度よりクオール株式会社では、MBTI®を人財育成プログラムとして本格導入し、専門組織の支援を受けながら、社内に在籍するMBTI認定プラクティショナーを中心とした継続的な支援体制を構築している。本業界でMBTI®を社内で内製的に活用する取り組みは例が少なく、導入初期ではあるものの、自己理解を基盤とした人財育成のあり方に新たな視点をもたらすものと考えている。このような背景を踏まえ、薬学教育における自己理解支援の意義と今後の展開可能性について考察を深めたい。
©MBTI and Myers-Briggs Type Indicator are registered trademarks of the Myers & Briggs Foundation in the United States and other countries.
「自分は●●タイプだからこう」「あの人は●●タイプだからきっとこう」―こうした言葉が、学生の間で自然に交わされる光景が珍しくなくなってきた。心理検査MBTI®(エムビーティーアイ:Myers-Briggs Type Indicator)と誤認されやすい無料のタイプ診断(16Personalities)がSNS等で広がり、自己理解が単なるタイプ分類に還元され、人間関係までもが効率性や相性で語られる風潮がある。だがMBTI®の本質は、そうした“決めつけ”とは本来、対極にある。
MBTI®はユングのタイプ論に基づき、信頼性、妥当性が検証されている国際規格に則って開発された性格検査である。私たちが生まれつきもつ情報の取り入れ方(知覚)や意思決定の方法(判断)について、どちらを自然に優先するかという「心の利き手®」の違いに着目している。MBTI®はその人がその人であるための本質、キャラクターを理解するための類型論を用いたツールであり、MBTI®は検査を受けて終わりではなく、回答結果をきっかけとして、有資格者の支援のもとで自己分析を行うプロセスが重視される。特性論を用いる16Personalitiesとは本質的に異なるものである。
本発表では、支援の質は支援者自身の自己理解の深さによって左右されるという視点から、「自己理解・他者理解」を教育資源として改めて位置づけ、その意義について検討する。教育的価値を十分に活かすためには、支援者が類型を安易に断定せず、特性論的な見方に偏らない柔軟な視座を持つことが求められる。支援者自身が、自らの言動が学生の自己概念や他者理解にどのような影響を及ぼすのかを自覚的に捉えているかどうかが、支援の質に大きく関わると考えられる。対人援助やキャリア形成の基盤として、学生が自己を多面的に捉え、他者との関係性を柔軟に理解していく力を育むために、教育者に期待される姿勢と関与のあり方について議論したい。
今年度よりクオール株式会社では、MBTI®を人財育成プログラムとして本格導入し、専門組織の支援を受けながら、社内に在籍するMBTI認定プラクティショナーを中心とした継続的な支援体制を構築している。本業界でMBTI®を社内で内製的に活用する取り組みは例が少なく、導入初期ではあるものの、自己理解を基盤とした人財育成のあり方に新たな視点をもたらすものと考えている。このような背景を踏まえ、薬学教育における自己理解支援の意義と今後の展開可能性について考察を深めたい。
©MBTI and Myers-Briggs Type Indicator are registered trademarks of the Myers & Briggs Foundation in the United States and other countries.