セッション詳細

シンポジウム10
自己理解と他者理解、他者支援への理論と実践
―薬学部における学生支援/学修支援の質向上を目指して―

2025年8月24日(日) 13:30 〜 15:30
第5会場(403教室)
代表オーガナイザー:山内 理恵(星薬科大学 薬学教育研究センター 薬学教育研究部門)
共同オーガナイザー:畑 春実(帝京平成大学 薬学部 薬学教育研究センター)
〇概要:
学生主体の学生支援/学修支援を実践するには教員自身のカウンセリング力向上が欠かせないが、個々の経験や力量に依存しがちである。そこで本シンポジウムでは自己理解から他者理解、他者支援へと向けた流れを理解し実践につなげるヒントを得るため、認知行動療法 CBT、マインドフルネス、感情知能EQ、自己理解ツール等エビデンスのあるリソースを各専門家にご紹介いただき、薬学教育の質向上につなげるにはどうすべきか議論する。
〇詳細:
 18歳人口の減少に伴う大学進学率の上昇により、大学入学者の学力、価値観、生活背景は一層多様化している。薬学部でも学修・生活・対人関係に課題を抱える学生が増加しており、個別のニーズに応じた柔軟な学生支援が求められている。適切なカウンセリング的支援が学修機能の改善に寄与するとの報告もあり、学生支援は単なる福祉的対応ではなく、戦略的な教育的関与、すなわち学修支援の一環として重要な役割を果たしている。
 学生支援の本質は、学生一人ひとりの学びの在り方を尊重し、自主的かつ持続的な成長を促すことにある。知識や技能の修得支援にとどまらず、学びへの関心を保ち、自ら調整しながら深めていく「自己調整学修力」の育成こそが、本来の目的である。これを支えるには、学生の心理的・社会的背景に感度高く対応し、信頼関係を築く「カウンセリング的関わり」が不可欠であるが、そのスキルは教員の資質や経験に依存しており、体系的育成の機会は限られているのが実情である。
 そこで本シンポジウムでは、薬学教育における支援力向上のヒントを共有するため、各分野の専門家をお招きした。前半は、認知行動療法(CBT)による支援の構造化、マインドフルリスニングを用いた関係形成など、支援の質向上に欠かせない視座に焦点をあてる。学生支援で最も大切なのは、教員と学生の関係性、そして学生を思う気持ちである。学生に最も近い存在は教員であり、その関係性にこそ支援の力が宿る。良好な関係を築き、学生の変容を促す実践例をご紹介いただく。後半は「自己理解から他者理解、そして他者支援へ」という支援のプロセスに着目し、自己理解ツールの意義や、感情知能(EQ)を育む支援についてご紹介いただく。ここで伝えたいのは、「他者支援の前に、まずは自己理解」である。教員自身が自己を理解し言語化することが、他者理解と支援の基盤となる。こうしたリテラシーは、教員のみならず、将来患者を支援する学生にとっても重要な学びとなるであろう。専門的取り扱いを要するツールもあるが、まずは考え方を知ることが第一歩である。
 学生支援は一人で抱え込むのではなく、教員全体で共有することが持続可能な支援体制の構築につながり、学生も教員もよりよく生きることにつながると信じている。本シンポジウムが、薬学教育に携わる教員の支援力向上と、学生がより主体的に学び続けられる環境づくりに資する契機となれば幸いである。

[SY10-0]オープニングリマークス

[SY10-1]多様な学生支援に認知行動療法的アプローチを活用する~教職員・薬学生・患者支援の一助として~

前田 初代(日本大学薬学部薬学研究所)

[SY10-2]心理的安全性とマインドフルリスニング~心の中にある目標を共有する~

後藤 理英子(東京医科大学 医学・看護学教育推進センター)

[SY10-3]自己理解から他者理解へ―薬学教育における人財育成とMBTI®の教育資源化―

伊藤 由香里(クオール株式会社 教育研修本部 人財育成部)

[SY10-4]SELで変える学生支援!―多様な学生の成長を引き出す感情ベースの新アプローチ―

湯本 哲郎(湘南医療大学教育センター)

[SY10-5]総合討論