講演情報

[SY10-4]SELで変える学生支援!―多様な学生の成長を引き出す感情ベースの新アプローチ―

湯本 哲郎(湘南医療大学教育センター)
〇略歴:
2008年 総合相模更生病院 薬剤部長
2018年 星薬科大学 薬剤師職能開発研究部門 教授
2021年 電気通信大学 客員研究員(兼務)
2023年 湘南医療大学 教育センター 教授

【資格】博士(薬学)
    6seconds認定(EQプラクティショナー、SEI EQアセッサー、
    EQエデュケーター3、ブレイン・プロファイラー)
〇本文:
 私たちは、学生の幸せや成長、そしてその先にある未来を支えたいと願いながら、日々、教育や支援の現場に向き合っています。そんな私たちは、今、幸せでしょうか。学生の気持ちに寄り添おうとする一方で自分自身の感情にも意識を向けているでしょうか。 私たちは、教育・研究・学生支援など、多くの役割を担う中でさまざまな感情を抱えながら過ごしています。思いを込めた支援が届かず落ち込んだり、学生の気持ちや反応がうまくつかめず戸惑ったり、評価を自分への否定と感じてしまったり、そうした気持ちをうまく言葉にできないまま抱え続けるうちに、気づけば心や体の疲れにつながっていたり、対人関係にも影響が出てしまうことがあるのではないでしょうか。私自身、そうした経験から学ぶことが少なくありません。一方、学生たちもまた、自分自身の感情をうまく扱うことに悩みながら社会を生きています。自己表現や内省の言語化に苦労し、学業や人間関係、将来への不安などに揺さぶられる中で自信を持つことが難しい状況にある学生も少なくありません。 感情を理解し、適切に扱う力である感情知能(Emotional Intelligence:EQ)を教育の中で育んでいくことが、ますます重要だと感じています。
 EQは、ピーター・サロベイとジョン・メイヤーによって理論化され、ダニエル・ゴールマンが広く紹介しました。中でも、ヌエバスクールにおけるセルフサイエンスという授業は、EQ教育の先駆けとも言える取り組みです。この実践をもとに設立されたSix Secondsは、国際的な教育組織として、教育・ビジネス・医療などの分野でEQの実践と普及を進めています。 
 本シンポジウムでは、社会性と情動の学習(Social and Emotional Learning:SEL)の基本的な考え方と本学での実践事例を紹介しながら、現状や課題を共有したいと考えています。また、プルチックの感情モデルを使った「感情リテラシー」のワークにも取り組みます。安心して取り組んでいただける静かな自分と向き合う個人ワークです。
  EQは、教員にとっては「関わる力」の土台であり、学生にとっては「不確実な世界を生き抜く力」となります。感情は、私たちに大切なことを伝えてくれる“情報”です。だからこそ、まずは支援する私たちが、自分の感情とどう向き合うかを見つめ直すことが、学生とのよりよい関係づくり、そして支援の質を高めるための大切な一歩になるのではと考えます。
 教員や学生の皆さんと当日お会いできることを楽しみにしています。