講演情報

[SY4-4]薬剤師による研究活動の推進に向けた教育の実践と課題

岡田 直人(山口大学医学部附属病院薬剤部)
〇略歴:
2007年 徳島大学薬学部卒業
2008年 徳島赤十字病院 薬剤部 薬剤師
2010年 徳島大学病院 薬剤部 薬剤師
2011年 徳島大学病院 薬剤部 助教
2015年 徳島大学大学院医歯薬学研究部 臨床薬学実務教育学 助教
2017年 徳島大学病院 薬剤部 薬剤師
2019年 徳島大学病院 感染制御部 副部長(兼任)
2022年 山口大学医学部附属病院薬剤部 講師・副薬剤部長
2025年 同上 准教授・副薬剤部長
〇本文:
 薬剤師業務は「物から人へ」拡張しつつあり、根拠に基づく業務遂行が強く求められている。これに伴い、臨床現場の薬剤師が自らクリニカルクエスチョンを発見し、エビデンスを創出する研究活動の重要性が高まっている。薬学教育モデル・コアカリキュラムにおいても、「薬学・医療の進歩と改善に資するために研究を遂行する意欲と、問題発見・解決能力を有する薬剤師の育成」が明記されており、研究マインドの涵養は教育の重要な柱である。
 この文言は薬学教育の場では良く語られるが、実際に臨床現場に出た薬剤師はこの言葉に従い研究活動を行っているのであろうか。タイパ・コスパが優先され、自己の経験論や理想論を振りかざすだけではヒトは動かない時代において、現実的に薬剤師による研究活動を推進するためには、医療現場での研究活動推進の風土醸成と指導者の育成が喫緊の課題である。
 学生時代から培った研究マインドを医療現場で持ち続けるのは難しい。その意識を持ち続けるためには仲間が必要である。近年はSNSなどを使ってその仲間を見つける動きもあるが、そのようなコミュニティはごく少数で、多くは自施設での仲間の存在が大切になる。さらに学生時代は常に研究指導者が傍にいる状態で研究を行うが、医療現場ではそのような指導者がいるとは限らない。適切な支援がなければクリニカルクエスチョンを見つけること自体が困難となり、結果的に研究を断念するケースも少なくない。医療現場での研究教育を担う側には、研究を可能とする組織的な環境整備が求められる。
 山口大学医学部附属病院では学位取得者を中心とした研究ワーキンググループを作り、部内研究の活性化のための方策を部員自らが考え実践している。さらに部内全体でクリニカルクエスチョンを収集し、提案者を中心とした研究チームを作り、自主的に動き考えながら研究を進める取組みを開始した。また、研究の最終ゴールは論文として公表することを意識させ、学会発表をした研究は論文として発表することを目標に論文執筆にも各々がチャレンジしている。この一連の流れの中で「この研究が終わったあとの次の姿」をイメージして、持続的な意識変容と行動の実践を起こすよう指導を行っている。
 本発表では、大学時代で培った研究マインドを医療現場で持ち続け、自律的に研究を推進できる薬剤師を育成するためには何が必要か現場視点で議論したい。