講演情報

[SY6-1]医歯薬学分野におけるデータサイエンス教育の実装とコアカリへの対応

須藤 毅顕(東京科学大学 データサイエンス・AI全学教育機構)
木下 淳博(東京科学大学)
〇略歴:須藤毅顕
東京科学大学 データサイエンス・AI全学教育機構 特任講師。2012年東京医科歯科大学歯学部卒業。2017年同大学歯周病学分野博士課程修了。同大学 歯周病学分野 医員、統合教育機構 特任講師などを経て、現職。
〇略歴:木下淳博
東京科学大学 副理事(DX・医療情報担当)。2004年東京医科歯科大学 歯学部教授 、2010年 同副学長(メディア教育担当)/ 教育メディア開発学分野教授、2024年 同執行役・副学長を経て、現職。
〇本文:
 本学は、2020年4月より「数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアム」の医学・歯学分野における特定分野協力校に採択され、「医学・歯学分野における数理・データサイエンス・AI教育の開発」という事業のもと、保健医療分野におけるデータサイエンス教育の実装と展開に取り組んできた。
 その一環として、2021年度には「医療とAI・ビッグデータ入門」、2022年度には「医療とAI・ビッグデータ応用」の科目を新設した。これらはいずれも、コンソーシアムが策定したモデルカリキュラムに準拠し、それぞれリテラシーレベルおよび応用基礎レベルに対応している。「医療とAI・ビッグデータ入門」は、前半を本学M&Dデータ科学センターの教員による最新研究の紹介(オムニバス形式)、後半をPythonの基礎から深層学習まで扱うプログラミング演習とし、学生の動機づけを重視した構成となっている。一方、「医療とAI・ビッグデータ応用」では、演習中心の授業を通して、学生が自らコードを記述・実行することで、深層学習・機械学習の理解をさらに深めることを目的としている。
 また、本学では教育実装と並行して、普及活動にも注力している。2020年以降、学会やコンソーシアムを通じて毎年ワークショップやシンポジウムを開催し、医療系大学の教員に対して、限られた教員数で演習を実施する工夫や、実際のプログラミング演習を体験できる機会を提供してきた。特に、データサイエンスに特化した学部を持たない大学が多い現状では、教育を担う人材の育成・共有が重要な課題となっている。
 さらに、令和4年度には医学・歯学・薬学のモデル・コア・カリキュラムが改訂され、データサイエンスやAIへの対応が明確に盛り込まれた。これを受けて、令和6年度にはコンソーシアムと共同で「医歯薬系大学・学部における数理・データサイエンス・AI教育実施に向けた手引き」を作成・公開し、モデル・コア・カリキュラムとの対応を明示した。
 本発表では、本学におけるデータサイエンス教育の実装・普及活動の取り組みを紹介するとともに、モデル・コア・カリキュラムとの整合を踏まえた今後の教育展開の方策について報告する。これからデータサイエンス教育の導入を検討する医療系教員にとって、有用な情報となれば幸いである。