講演情報

[SY6-3]薬学生へのデータサイエンス教育の実践報告

木下 淳(兵庫医科大学薬学部)
〇略歴:
兵庫医科大学薬学部教授、博士(薬学)。
日本薬学教育学会 理事、ICT教育委員会 委員長、薬学教育カリキュラム検討委員会 委員、薬学教育協議会 薬学教育モデル・コア・カリキュラム改訂のためのワーキンググループ 委員(B社会と薬学)、数理・データサイエンス・AI 教育強化拠点コンソーシアム 医療系分野 IT 標準教材作成ワーキンググループ 委員などを担当。
令和4年度 日本私立薬科大学協会 教育賞 受賞。
〇本文:
 令和4年度に薬学教育モデル・コア・カリキュラム(以下、コアカリ)の改訂版が策定され、令和6年度入学生より適用が開始された。演者は、その初年度より1年次前期必修科目「薬学入門Ⅰ(薬剤師の使命)」を担当している。本科目では、新入生が薬剤師として求められる倫理観やプロフェッショナリズムを6年間にわたって涵養するための導入教育として、薬剤師の社会的使命や法的責任、地域社会における役割、さらには情報・科学技術の活用能力やデータサイエンスへの理解に焦点を当てている。学生はこれらを踏まえ、自身が身につけるべき能力や学習姿勢を自覚し、医療人としての第一歩を踏み出すことを目指している。
 本シンポジウムでは、当該科目におけるデータサイエンス教育の実践例を紹介する。令和6年度は、東京医科歯科大学(現・東京科学大学)の医療系データサイエンス教育ワークショップより提供された教材を活用し、Pythonによるビッグデータ解析体験および胸部X線画像を用いた深層学習(Deep Learning)の演習を実施した。令和7年度には、架空の2000名分の患者データを作成し、ある医療機関におけるNSAIDs使用状況を解析する演習を実施した。演習では、Pythonによるライブラリのインポート、データフレームの確認、年齢・体重の平均値および標準偏差の算出、投与ルートの集計と図表作成による可視化までを体験できるよう設計した。これらの演習では、大学が所有する端末をグループに1台ずつ貸与したが、原則、学生の所有端末を用いたBYOD(Bring Your Own Device)環境で実施した。
 各年度の演習後には、「未来社会で薬剤師に求められるデジタル技術・データサイエンス能力とは」をテーマに小グループ討議およびプレゼンテーションを課し、学修者の学びの深化を図った。これら一連の教育方略は、コアカリB-5-2「デジタル技術・データサイエンス」の学修目標達成を意図したものである。
 本発表では、これらの取り組みの具体的な実践内容に加え、授業実施に際しての準備事項、当日のトラブル事例とその対応策についても共有する。