講演情報

[SY7-4]初年次におけるコミュニケーション教育の効果―「気づきの体験学習」を導入して ―

岸本 成史(昭和薬科大学)
〇略歴:
1991年に東京理科大学大学院薬学研究科薬学専攻修士課程修了後、帝京大学薬学部に着任。同大学講師、准教授を経て2010年教授に就任。2021年昭和薬科大学教授に就任し、現在に至る。
〇本文:
 近年、薬剤師の業務は薬を対象としたものから人を対象としたものが中心となり、6年制薬学教育において患者や他職種と良好な信頼関係を築いて最適な薬学的管理を実践するために必要なコミュニケーションスキルを醸成することが重要視されている。薬剤師が患者と信頼関係を構築できるような服薬指導などの医療面接を行うためには、傾聴、受容、共感や支持といった基本的な態度を身につけていることが大切であるが、これらを実際に行動で示すことが出来るようなパフォーマンスレベルにまで到達させるためには、知識のみを提供する講義や単なるグループ討議のみを行う演習では不十分である。
 このような薬剤師に求められるコミュニケーション能力の基盤となる、相手の心理、立場、環境を理解し、信頼関係を構築するための基本的な態度を身につけることを目的として、1年次に「気づきの体験学習」という体験型の授業を導入したところ、受講することにより「相手のことを思いやり、他者を大切にすることの大切さに気づいた」学生群や「相手への気持ちを理解することの難しさを知り、相手の話を聴く態度の重要性に気づいた」学生群、「コミュニケーションに苦手意識を持っていたものの、相手への関心を持つことの大切さに気がついた」学生群が存在することが分かった。また、本プログラムの受講により、人とのコミュニケーションについて前向きになるような行動変容が起きたと考えられる学生がいる一方で、体験学習に対して拒否的な態度を示す学生もいた。
 本講演では、このように人とのコミュニケーションについて体験的に学んで理解する「気づきの体験学習」が受講生の社会的動機づけにおける「自己効力感」や「自律的動機づけ」にどのような影響を与えたのか、他の授業プログラム等にも活かせる点があるのか、について講師役の海沼先生の解説をいただきながら、会場の皆様と討論できれば幸いです。