講演情報

[SY8-4]行政、大学、地域の薬局・クリニック協働での地域貢献活動の実践事例(行政、大学、地域の薬局・クリニック協働で実施する地域貢献活動)

加地 弘明(就実大学薬学部 社会薬学研究室)
〇略歴:
1998年 岡山大学薬学部製薬化学科卒業
2000年 岡山大学大学院薬学研究科(医療薬学専攻)修士課程修了
2003年 岡山大学大学院自然科学研究科(生体調節化学専攻)博士後期過程修了。就実大学薬学部助手、同助教、姫路獨協大学薬学部講師、就実大学薬学部講師を経て、2020年より同准教授(現職)。
2023年4月より就実大学薬学部臨床薬学教育研究センター長。
〇本文:
 令和4年に公表された厚生労働省の「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループとりまとめ~薬剤師が地域で活躍するためのアクションプラン~」では、薬局薬剤師に対して処方箋受付時以外の対人業務の充実化が示されており、専門性の向上や自己研鑽,質の高い患者対応が社会に求められていることに言及している。薬剤師の資質向上という観点からも入職後の薬剤師に対する生涯学習として、対人業務に積極的に取り組み、他職種や地域との繋がりを創出できるようになるための教育が重要である。しかし、卒後教育として統一されたモデルはなく、座学による講習会や各医療施設内での on the job trainingの実施に留まっているのが現状である。従って、多くの場合で卒後教育は入職した医療施設の取り組み度合いや個人のモチベーション任せになっていると推察でき、対人業務や自己研鑽への意識は個人間で温度差が生じていると考えられる。
 また、国は健康寿命延伸や生活習慣病の発症・重症化予防に力を入れており、医療を受ける側と医療を提供する側双方への健康増進に対する意識改革も必要である。中でも薬局は軽症患者や未病者のファーストアクセスの場であるよう努めることが求められており、薬局が地域住民に対する健康支援の場であることを薬局従業員のみならず地域全体に周知していくことが必須であると言えるが、薬局単独での健康増進活動は様々な制約を伴うため、実施が困難であることは多い。
 このような背景のもと、我々は大学が地域における健康増進に関する取り組みを創出し、行政を介して当該地域の複数の薬局やクリニック、地域住民などに参加を打診することで、地域住民に対する健康支援、薬局を含む医療提供施設の従業員に対する生涯学習支援、さらには、薬学部学生に対する地域医療教育に繋がり、本取り組みに関わる全ての人たちにとってメリットとなりうると考えた。特に医療資源の地域偏在が問題となっているような中山間地域等においては、互助的に協力体制を構築しやすいため、地域全体での取り組みに繋がり、結果として地域住民の健康意識向上に貢献できると考えられる。
 本シンポジウムでは、大学と行政、そして地域の薬局・クリニックが協働で地域住民に対する健康支援や薬の適正使用に向けた活動を実施した実践事例を詳細に紹介するとともに、その利点と問題点、実践後の波及効果について報告する。