講演情報

[SY8-5]企業・行政との連携による卒後教育の実践:臨床研究とヘルスプロモーション―COMPASS研究と薬剤師の卒後研修活動―

岡田 浩(和歌山県立医科大学薬学部)
〇略歴:
和歌山県立医科大学薬学部 教授、博士(社会健康医学)。福岡教育大学、長崎大学薬学部卒、京都大学大学院博士後期課程修了。小中学校講師を経験後に薬学部を卒業。卒後は保険薬局勤務。学位取得後はアルバータ大学、京都大学大学院を経て現職。薬局における患者支援(COMPASSプロジェクト)や薬剤師教育プログラムを開発。著書25冊、論文64編。FIP/UNICEFのUNITWIN等、国内外の委員活動も務める。主な受賞歴としてFIP、Hypertension Canada など。
〇本文:
近年、薬局は従来の薬剤供給や安全で有効な薬物療法の実施にとどまらず、疾患予防や健康支援を含む幅広い役割が期待されるようになっている。薬剤師は、拡大する薬局機能に対応するため、従来の薬物関連知識だけでなく、予防や患者支援についても学ぶ必要が生じている。多忙な薬剤師にとって、研修では実践的かつ即実施可能な知識やスキルを学ぶことが求められる。新薬学教育モデル・コア・カリキュラムにおいても、生涯にわたり自己研鑽を続ける姿勢と、次世代育成に向けたロールモデルとしての自覚が求められている。
本講演では、薬局をフィールドとした臨床研究とその成果に基づく薬剤師の卒後研修の実践例を紹介する。まず、和歌山県と連携して実施している持続血糖測定器(リブレ)を活用した糖尿病スクリーニング支援を取り上げる。患者の血糖変動データを可視化し、生活習慣改善への動機づけを図る本事業は、薬局薬剤師の新たな介入モデルとして展開した。また、睡眠測定デバイスを用いた薬剤師による睡眠衛生指導による睡眠の質向上支援(COMPASS-Insomnia)、ノンアルコール飲料配布による減酒支援(COMPASS-Reduce)など、多様な臨床研究の実施についても紹介する。
これらの取り組みにより、薬局薬剤師が短時間で効果的に地域住民のヘルスプロモーション支援を実施できるよう、支援ツールや介入プロトコルの開発も進めている。さらに、これらの実践を卒後教育に還元し、薬剤師が現場で即活用できる学びの機会を提供している。
卒後教育としては、薬局での糖尿病患者支援COMPASS研究で使用した短時間の動機づけ面接プログラムを「3☆薬剤師研修」として2012年から2019年まで実施した。COVID-19パンデミックによる中断後は、電子薬歴システム会社と連携してWeb研修プログラムとして再構築し、現在では全国に受講者を有する。生活習慣改善支援、行動経済学のナッジ、動機づけ面接法などの行動変容支援技法を中心に据え、薬剤師が日常業務に直結するスキルを身につける内容としている。
本講演では、これらの薬局での臨床研究と卒後研修の実践例を通じて、薬局薬剤師が生涯にわたり自己研鑽を続け、地域住民の健康支援に貢献するための方策と可能性について参加者と議論したい。