講演情報

[SY9-1]大学教育におけるEBMトレーニングの実践―学部・実務実習・卒後教育を通して何ができるか―

上田 昌宏(摂南大学薬学部)
〇略歴:
2013年 兵庫医療大学薬学部 卒業
2013年 兵庫医科大学病院 薬剤部
2017年 兵庫医科大学ささやま医療センター 薬剤室(出向)
2018年 兵庫医療大学大学院 薬学研究科 博士課程 修了
2019年 摂南大学薬学部 特任助教
2023年 摂南大学薬学部 講師 現在に至る

【受賞歴】
2019年度日本薬学教育学会 教育研究奨励賞 受賞
〇本文:
 本講演では、学部教育、実務実習、卒後教育におけるEBM教育の実際について取り上げる。学部教育における臨床準備教育の段階では、EBM実践プロセスのStep 1〜3(問題の定式化、情報検索、情報の批判的吟味)を中心に学修し、Step 4(患者への適用)は「does」の環境である実務実習において実践的に学ぶことが望ましい。ただし、Step 4の実践には、実務実習までに「shows how」のトレーニングを段階的に積む必要があり、その基盤としてStep 1〜3の洗練が不可欠である。これら一連の流れを短期間で修得することは難しく、低学年次からの継続的な学修を行うことが求められる。
 令和4年度の薬学教育モデル・コア・カリキュラム改訂(令和版コアカリ)により、学部教育における教育内容の自由度が高くなり、各大学が教育内容に濃淡をつけることが可能となった。令和版コアカリでは、学生生活の早期から臨床を意識した教育を行い、薬剤師としての将来像を明確化することで、学生の動機付けを促すことが求められている。本学では早期体験学習に加え、臨床の入り口として、1年次に簡易な症例を用いた「問題の定式化」を行う演習を実施し、患者情報から問題を抽出する経験を積ませている。さらに、4年次では、「問題の定式化」「情報検索」「情報の批判的吟味」「患者への適用」までを講義・演習形式で行い、EBMの実践が単なる理論にとどまらず、臨床で使える知識として定着させることを目指している。これらの準備を経て実務実習に臨むことで、学生は実践的なスキルの修得が期待される。また、卒後教育では、EBMの学びなおしや生涯研鑽の場として、ワークショップなどの研修会を行い、臨床現場におけるEBM実践力を継続的に養っている。
 本講演では、1)学部教育における初年次や4年次での臨床準備教育、2)実務実習における病院実習生への長期的なEBM教育の取り組み、3)卒後教育としてのワークショップ・研修会の事例について、各学習段階における学習方略と教育効果を中心に紹介する。それぞれの段階に応じたEBM教育を通じて、薬剤師が支援する患者個々の生活・薬物療法の最適化を深化させる手法について議論したい。