講演情報

[SY9-2]卒前・卒後におけるEBM教育の課題と展望―若手薬剤師としての「EBM実践のリアル」―

田渕 宏典(神戸市立医療センター中央市民病院 薬剤部)
〇略歴:
2021年  3月 岡山大学薬学部 卒業
2021年  4月 神戸市立医療センター中央市民病院薬剤部 入職
2023年10月 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科(博士課程) 入学
2024年  7月 日病薬病院薬学認定薬剤師 取得
〇本文:
 薬学教育においてEvidence Based Medicine (EBM) の重要性は広く認識されており、薬学教育モデル・コアカリキュラムにも記載されている。私は大学時代に、EBMの基本的な考え方を学ぶとともに、症例をもとに添付文書や論文を活用する形式の講義も受講した。しかし、新人薬剤師として臨床現場に出た際には、疑問を抱いたとしても、その解決手段として限られた情報検索に頼らざるを得ず、EBMのステップに沿って情報を収集・吟味し、目の前の業務や症例に応用することが困難であると感じる場面が多くあった。このように、卒前教育でEBMの基本的な考え方を学んだとしても、卒後、臨床現場でEBMを直ちに実践することは容易ではない。
 教育を受けた立場として振り返ると、私が経験したように、机上で学ぶEBMの基礎だけではなく、その応用を学ぶ演習や、病院実務実習における実症例を対象としたより実践的なトレーニングが卒前教育には不足していると考える。同様に、卒後教育においても、EBMの教育は職場や指導者によって差異が大きい現状があるため、薬剤師の臨床業務の基本スキルの一つとして、今後はEBM教育を均てん化していく必要があるのではないかと考える。
 当院では新人職員教育の一環として、1年次に「情報検索の基礎」、2年次に「症例ベースのEBM研修」など、業務内容に合わせて、段階的に実践へつなげるための教育プログラムを取り入れている。本シンポジウムでは、若手薬剤師としての立場から、自身が経験した卒前教育で得た知識と臨床現場で求められる実践力とのギャップを実体験に基づいて共有し、これを卒後教育でカバーするための取り組みについて紹介する。