招待講演者
世話人から提案され,行委委員会が承認したトピックセッション招待講演者(予定も含む)をご紹介します.講演時間は変更になる場合があります.
T1 変成岩とテクトニクス | T2 南極研究の最前線 | T3 文化地質学 |
T4 ジオパーク | T5 原子力と地質科学 | T6 マグマ供給系 |
T7 テクトニクス | T8 都市地質学 | T9 九州と琉球弧 |
T10 岩鉱の変形と反応 | T11 鉱物資源 | T12 海域火山と漂流軽石 |
T13 堆積地質 | T14 沖縄トラフと東シナ海陸棚 | T15 地域地質・層序 |
T16 地球史 | T17 沈み込み帯・付加体 | T18 能登半島地震 |
T1.変成岩とテクトニクス
仁木創太(名古屋大・非会員)30分 仁木氏は,超微量元素・同位体分析法の開発,地質試料に対する年代測定法の開発とその応用研究に取り組んでおられる.仁木氏らによる代表的な研究として,三波川変成帯エクロジャイト岩体中のマーブルに産する灰礬柘榴石(Niki et al. 2022)やチタナイトのU-Pb年代(Yoshida, Niki et al. 2021)に関する研究がある.これらの研究において,仁木氏は新たな鉱物のU-Pb年代測定法をいちはやく取り入れ,従来は困難であった岩相から年代を制約し,三波川変成帯のテクトニクスに関する新たな知見を見出している.仁木氏による最新の研究成果を本セッションにおいて講演していただくことで,変成岩岩石学と年代学の融合領域に新たな展開が生まれることが期待される.
T2.南極研究の最前線
堀川恵司(富山大・非会員)30分 堀川氏は,海底堆積物等の化学的分析を駆使した古気候・海洋分野の研究で世界的に注目される研究者である.とくに,最近は西南極沖で採取されたIODPコアのネオジム・鉛同位体比を解析から,南極大陸起源物資の供給源変動を復元し,鮮新世における南極氷床の融解条件の解明に取り組んでいる.今大会ではこれらの最新研究成果について講演頂く.
宇野正起(東北大・会員)30分 宇野会員は,地殻内部における岩石-流体反応の物理化学プロセスの実態に迫る研究を推進する気鋭の研究者であり,過去の変動帯の反応-応力解析から現在観測される地殻破壊現象の物質科学的な解明を目指す研究が注目されている.今大会では,岩石-流体反応に関わる最新研究に加え,フィールドとしての南極の魅力についてご講演いただく予定である.
T3.文化地質学
田宮良一(会員,文化地質研究会会員)30分 現在の奥羽山脈一帯が隆起ステージに転じた後期中新世には,カルデラを伴う流紋岩~デイサイト質の爆発的噴火によって供給された火砕流堆積物を主体とした地層が数多く分布している.田宮氏は元山形県庁の職員として山形県の温泉や地質の調査・研究に長く関わってきており,山形県だけでなく東北各地の新第三系を観察してきた.今回は,「奥羽山脈に分布する凝灰岩の文化誌的視点,特に景観について」の講演を依頼している.
荒木志伸(山形大・非会員,文化地質研究会会員)30分 山形県には著名な霊場が集中している.その空間内には多くの石碑が残っており,山寺だけでも約1000基がある.これらは,いつ,だれが,何のために建立したのだろうか.地質学者は地質・岩石は興味・研究の対象であるが,その歴史や文化的背景には詳しくない.荒木氏は長年山寺の石碑を調査研究し,他地域との比較を行ってきた.今回は考古学者である荒木氏に石の文化財から みた地域の歴史について講演をしていただく.
T4.大地と人間活動を楽しみながら学ぶジオパーク(なし)
T5.原子力と地質科学
佐藤 努(北海道大・非会員)30分 高レベル放射性廃棄物の地層処分においては,システムの長期間の安全性を示す論拠としてナチュラルアナログ(天然類似現象,以下NA)が利用されてきたが,佐藤氏はこれを市民との対話としての「言葉をつないだ物語に基づく技術(ナラティブ・ベイスト・エンジニアリング:NBE)」としての新たな利用法を提案している.NA事象の取り扱いについては地質学者が得意とするところであり,本セッションの趣旨に沿うものである.
T6.マグマソース・マグマ供給系から火山体形成まで
アントニオ アルバレツ(サラマンカ大・非会員)30分 アルバレツ氏は,スペイン南部のエルオヤゾ,カナリア諸島のエルイエロ,南極のデセプション島など,様々な火山のマグマ供給系やマグマソースに関する研究を物質科学的に多角的な視点から精力的に行っており,マグマ供給系の構成や機能について明らかにしている.その成果に関する講演は,地質学会の関連分野の会員にとても有益な情報となると考えられる.
T7.テクトニクス
牛丸健太郎(産総研・会員)30分 牛丸会員は,2024年3月に博士号を取得された若手研究者で,野外地質調査,応力解析,放射年代,などにもとづいて九州北西部の新生代テクトニクスについて新たなモデルを提案するなど多くの論文を発表している.そこで,牛丸氏のこれまでの研究成果を中心に九州西部の新生代テクトニクスを議論していただく.
T8.都市地質学:自然と社会の融合領域
林 武司(秋田大・非会員)30分 林氏は,我が国の地下水研究をリードする研究者の一人であり,特に東京をはじめとする大都市圏において,地下水の地球化学的アプローチにより,都市化に伴う地下水環境変化,流域レベルでの水循環について明らかにしてきた.講演者が研究対象とする都市の地下水環境の変容は都市地質学の重要な課題である.なお氏は日本地質学会2024年地質の日イベント,街中ジオ散歩in Tokyo「身近な地形・地質から探る麻布の歴史と湧水」の案内者でもある.
T9.九州と琉球弧の地体構造枠組み:最新の年代測定と視点
新正裕尚(東京経済大・会員)30分 新正会員は,系統的なジルコン年代学・地球化学的研究から,西南日本外帯での中新世火成活動の時空間変遷とそのテクトニクスについて重要な成果を報告して来られた.最近では九州西方の中新世火成活動についても研究を進めておられ,沖縄トラフ形成に伴うリフティングのタイミングについても新たな年代制限を明らかにされた.日本海・沖縄トラフ拡大前の九州・琉球弧の地体区分の理解に重要なフィリピン海プレートの運動と沖縄トラフの形成過程について同会員に最新のレビューをお願いしたい.
斎藤 眞(産総研・会員)30分 斎藤会員は西南日本外帯の秩父帯および四万十帯の付加体を研究されてきたベテラン研究者である.特に九州および南西諸島において,詳細な地質調査を重ね,これまでに「椎葉村」,「砥用」などの複数の1/50,000地質図幅,また1/200,000編纂地質図「八代」,「奄美大島」,「徳之島」を公表して来られた.セッションの表題地域の理解の基礎となる広域の地質情報について広範な知識をお持ちの同会員に,これまでの研究成果をレビューしていただきたい.
T10.岩石・鉱物の変形と反応
大柳良介(国士舘大・会員)30分 大柳会員は岩石-水の相互作用と反応輸送過程の理解を目指し研究している.特に,沈み込み帯のプレート境界やマントルウェッジで起こる蛇紋岩化とそれに伴うシリカなどの物質移動・蛇紋岩と変成岩間の物質移動についての近年の一連の研究成果は参加者の興味を大きく引くと考えられる.
西山直毅(産総研・会員)30分 西山会員は,地球内部で起こる岩石-水相互作用の理解の ために,岩石表面での水の状態や化学組成・浸透率など多孔質媒体としての岩石の移動特性についてなどの研究をおこなっている.それらの知識を生かした研究対象は,二酸化炭素地下貯留,地震発生帯,地滑りなど多岐に渡る.西山会員の多彩な研究成果のすべてが本セッション聴講者の興味を引くものと期待される.
T11.鉱物資源研究の最前線
浅見慶志朗(早稲田大・会員)30分 浅見会員は,新しいタイプの火山であるプチスポット火山の活動に伴う熱水活動よって形成された鉄マンガン酸化物の発見によって,資源地質学分野に新たな展開をもたらしている新進気鋭の研究者である.浅見氏は,上記以外のマンガンクラストおよびマンガンノジュールの研究についても幅広く行っている.μXRFやLA-ICP-MSを用いた微小分析や多元素同位体分析を駆使した地球化学的研究のほか,多変量統計解析による化学組成データの解析・解釈を行うなど,革新的かつ独創的な研究を展開している.本講演では,最新の研究展開と今後の展望について話題を提供して頂く予定である.
T12.海域火山と漂流軽石
前野 深(東京大地震研・非会員)15分 前野氏は西之島火山や福徳岡ノ場火山,鬼界カルデラをはじめとする海域火山研究に広く携わっている.これらの研究において,地質調査や数値解析,衛星解析などの手法を基に噴火活動の時間スケールを定量的に制約するなど,火山学分野に新たな展開をもたらしている注目の研究者である.また,観測においても第一線で活躍しており,貴重 な経験と知見を有している.本講演では海域火山についての最新の研究と今後の展望について話題を提供していただく予定である.
T13.堆積地質学の最新研究
浅海竜司(東北大・会員)30分 近年,サンゴや鍾乳石,有孔虫などに加え,新たな古気候アーカイブを利用した研究が進展している.浅海会員は,サンゴや鍾乳石のみならず,硬骨海綿や淡水性巻貝などを対象とした古環境学的・地球化学的研究を進められており,それによって第四紀の北西太平洋における表面水温などの変化を高精度に復元された.招待講演では最新の研究を紹 介いただく予定である.
持永竜郎(三菱ガス化学株式会社・会員)30分 持永氏は三菱ガス化学株式会社にて,一貫してエネルギー資源・CCSに関する業務に従事されてきた.東日本弧日本海側に拡がる石油・天然ガス田に関する知見だけでなく,海外における経験も豊富である.本招待講演では,最新の堆積盆探鉱と温暖化ガス削減対策であるCCSおよびCCUSに関する知見を御紹介頂く予定である.
T14.沖縄トラフと東シナ海陸棚研究の最前線
大坪 誠(産総研・会員)30分/新井隆太(海洋研究開発機構・会員)30分 大坪会員は,科学掘削による背弧海盆の拡大プロセスの理解を目的とした沖縄トラフ南部でのIODP掘削提案をリードしており,また,白鳳丸による反射法探査・ピストンコア探査も主席研究員としてまとめている.新井会員は,反射法探査・屈折法探査により沖縄トラフ海域の構造の解明を目指した研究を展開している.この2名から,沖縄トラフ海域研究の現在位置を紹介して頂き,沖縄トラフ海域の現時点の理解を俯瞰することができると考える.
T15.地域地質・層序学:現在と展望(なし)
T16.地球史
松崎賢史(東京大大気海洋研・会員)30分 松崎会員は,微古生物学を専門とし,放散虫化石を用いた年代層序学的検討や気候変動に対する海洋環境の変遷を明らかにする研究を行っている.松崎会員は,北西太平洋海域において放散虫化石を用いた変換関数を構築することで,中新世以降の表層・深層の水温変化の履歴を明らかにするなど,古気候・古海洋学の分野で重要な研究成果を挙げている.招待講演では,中新世以降の気候変動に対する北西太平洋の海洋循環の応答に関して,これまでの研究と今後の展望を講演していただく.
武藤 俊(産総研・会員)30分 武藤会員は,丹念な地質調査に基づいたコノドント化石を用いたジュラ紀付加体の層序復元を専門としており,パンサラッサ海におけるコノドント生層序を用いた遠洋性堆積岩の広域対比や,陸域と海洋と連動する環境変動記録の解明について研究を進めてきた.講演では,武藤会員が近年取り組まれている東北日本ジュラ紀付加体中の遠洋性堆積岩の層序復元・化石種の変遷,それらに記録された古環境ついて最新の研究結果について講演していただく.
T17.沈み込み帯・陸上付加体(なし)
T18.令和6年能登半島地震(M7.6)
平松良浩(金沢大・非会員)30分 平松氏は,能登半島の群発地震活動をテーマとした突発災害科研の研究代表者を務め,地震学・地球物理学を中心とした観測研究を取り纏めてこられた.このことから,令和6年能登半島地震の地震学・地球物理学的な背景と理解を紹介していただく最も適任な研究者である.ほか1名予定 30分