トピックセッション
一昨年の東京・早稲田大会から,セッションを「トピックセッション」,「ジェネラルセッション」,「アウトリーチセッション」の3カテゴリに区分し,従来のレギュラーセッションは発展的に解消されました.山形大会も早稲田大会,京都大会に引き継続き,上記3つのセッションで構成いたします.
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T1 変成岩とテクトニクス | T2 南極研究の最前線 | T3 文化地質学 |
T4 ジオパーク | T5 原子力と地質科学 | T6 マグマ供給系 |
T7 テクトニクス | T8 都市地質学 | T9 九州と琉球弧 |
T10 岩鉱の変形と反応 | T11 鉱物資源 | T12 海域火山と漂流軽石 |
T13 堆積地質 | T14 沖縄トラフと東シナ海陸棚 | T15 地域地質・層序 |
T16 地球史 | T17 沈み込み帯・付加体 | T18 能登半島地震 |
T1.変成岩とテクトニクス Metamorphic rocks and tectonics
世話人:大柳良介*(国士舘大;oyanagir[@マーク]kokushikan.ac.jp),田口知樹(早稲田大),北野一平(北海道大)
Convener: Ryosuke OYANAGI (Kokushikan Univ.), Tomoki TAGUCHI (Waseda Univ.), Ippei KITANO (Hokkaido Univ.)
本トピックセッションは,2021年大会までレギュラーセッションとして開催されてきた同名のセッションを継続さらに発展させる形で,国内外を問わず世界各地の変成岩・変形岩とテクトニクスなどに関連する幅広い研究成果を募集する.野外調査・岩石や鉱物組織の記載・各種機器分析などを基本とする岩石学的および構造地質学的研究のみならず,地殻・マントルのレオロジーや変成反応の物理化学的素過程など,様々な手法や規模の視点に立った話題を取り上げる.特に近年,従来測定対象でなかった壊変系列を用いた年代測定手法により,これまで知られていなかった沈み込み帯変成作用の描像やテクトニックな場が解明されている.今大会ではそんな「新しい」年代測定手法を変成岩分野に適用し始めた事例を紹介していただく招待講演を設定した.幅広い時空間スケールの現象を対象とし,総合的に議論することで,衝突帯や沈み込み帯などプレート境界で起こる変成・変形作用の包括的理解に迫る.
【招待講演者の予定】仁木創太(東京大・非会員)
T2.南極研究の最前線 Frontier of research on Antarctica
世話人:菅沼悠介*(国立極地研究所;suganuma.yusuke[@マーク]nipr.ac.jp),足立達朗(九州大),石輪健樹(国立極地研究所)
Convener:Yusuke SUGANUMA (National Institute of Polar Researc), Tatsuro ADACHI (Kyushu Univ.), Takeshige ISHIWA, (National Institute of Polar Research)
南極大陸は世界最古の大陸の一つであるとともに,近年は巨大な南極氷床の融解傾向が加速していることでも注目を集めている.過去60年以上にもわたる日本の南極地域観測隊では,とくに東南極のドロンニングモードランドからエンダビーランドにわたる地域に注目して,氷河地形地質や基盤地質の研究が活発に進められてきた.
氷河地形地質研究では,南極沿岸域の深海・浅海・湖沼堆積物や露岩域の氷河地形など対象とした過去の氷床変動復元を中心として,リモートセンシング技術等を使った各種の現場観測や氷床・気候・海洋モデル研究等と連携した統合的なアプローチから,南極氷床の変動・融解メカニズムや地球環境変動との相互作用の解明が進められている.また,最近は火星表面環境のアナログとして,寒冷・乾燥下の地形プロセス研究なども注目を集めている.
一方,基盤地質研究では,太古代から古生代最初期にかけて形成された変成岩・深成岩類から構成され,超大陸形成に伴うテクトニクスや,地殻内部の変成・火成・流体プロセスなどの解明に寄与している.最新の研究としては,岩石学・年代学的解析に基づくゴンドワナ超大陸形成時のテクトニックモデルや地帯構造区分の提案,部分融解や流体活動などの活動的地殻深部における素過程の解明に関する成果が報告されている.
本トピックセッションでは,分野の垣根を超えて最近の研究成果を集約し,南極研究から得られた知見を広く共有・議論する場を提供することで,次世代の南極研究を大きく広く展開させることを目的とする.また,南極に関わる研 究の魅力を発信し,南極研究に興味持つ(若手・中堅)研究者に新たな研究テーマやチャンスを提供するとともに,今後の観測計画への参加を促す機会となることを期待する.
【招待講演者の予定】堀川恵司(富山大・非会員),宇野正起(東北大・会員)
T3.文化地質学[共催:文化地質研究会] Culture geology
世話人:大友幸子*(山形大;yukiko[@マーク]e.yamagata-u.ac.jp),森野善広(パシフィックコンサルタンツ株式会社),猪股雅美(香川大)
Convener: Yukiko OHTOMO (Yamagata Univ.), MORINO Yoshihiro (Pacific Consultants Co., Ltd.), Masami INOMATA (Kagawa Univ.)
文化地質学は人類の文化・文明が,地質とどのように関わってきたか,そして現在もどのように関わっているかを研究する学際的学問分野である.これまでのトピックセッションでは,以下のような研究例が示された.(1)地質を石材など資源として活用した事例研究,(2)考古遺物の成分分析を行った研究,(3)地域の固有文化との関わりを論じた研究,(4)博物館などでの普及・教育実践についての研究,(5)地質に関わる文学の研究,(6)山岳霊場など宗教と地質の関わりを論じた研究.今年の大会は山形で開催されるため,招待講演は東北の後期中新世火砕岩が作る地質景観,山寺の石造文化に関連する講演者を選定した.これらの招待講演はポスト巡検の山寺コースの地質的背景や石碑文化財にも関連するものになっている.巡検参加者も個人で行く人たちにも,開催地山形の一端を知ってもらおうと考えている.今回のセッションでも,研究発表の申込みはこれに限定せず,文化・文明と地質との関わり,人・社会の営みと地質との関わり,観光資源としての地質など,地質と人々との関わりについて論じたすべての研究発表を歓迎する.
【招待講演者の予定】田宮良一(会員,文化地質研究会会員),荒木志伸(山形大・非会員,文化地質研究会会員)
T4.大地と人間活動を楽しみながら学ぶジオパーク Geopark to enjoy and learn about the earth and human activities
[共催:日本ジオパークネットワーク(JGN),後援:日本ジオパーク学術支援連合(JGASU)]
世話人:松原典孝*(兵庫県立大;nd5408y[@マーク]gmail.com),郡山鈴夏(フォッサマグナミュージアム),山崎由貴子(日本ジオパークネットワーク事務局)
Convener: Noritaka Matsubara (Graduate School of Regional Resource Management, Univ. of Hyogo), Suzuka Kooriyama (Fossa Magna Museum), Yukiko Yamasaki (Japanese Geoparks Network)
ジオパークは,大地とその上に広がる動植物や私たちの生活・文化・歴史を総合的に理解し,楽しみながら学ぶ場である.現在日本には,ユネスコ世界ジオパークを含む46のジオパークがあるが,それぞれの地域で教育やジオツアーによる観光などユニークな活動が展開されている.それらの活動にあたっては,大地の歴史(ジオ)やその上で展開されている人間活動との関連を,一般の方に分かり易く解説することが重要となる.令和5年度には日本地質学会が主催し,日本ジオパークネットワークおよび日本ジオパーク学術支援連合が共催する形で「市民対象オンラインシンポジウム ジオパーク地域に伝わる伝承と地質学:古代からの自然観を今に活かす」を開催した.これは各地に伝わる伝承を地質学の側面から紐解くユニークな試みで,学会員以外にもジオパーク関係者を中心に多くの参加者があった.本セッションは,こうした新たな取り組みを広く推進することを目的に,研究者のみならずジオパークの現場で活動している博物館学芸員・ジオパーク専門員・自治体職員・ジオパークガイド等も対象として,ジオパークに関連する幅広い講演を募集したい.本セッションの議論を通じて,日本地質学会としてジオパークの発展に寄与したい.
T5.原子力と地質科学 Nuclear Energy and Geological Sciences
世話人:竹内真司*(日本大;takeuchi.shinji[@マーク]nihon-u.ac.jp),吉田英一(名古屋大),梅田浩司(弘前大)
Convener: Shinji Takeuchi (Nihon Univ.), Hidekazu Yoshida (Nagoya Univ.), Koji Umeda (Hirosaki Univ.)
原子力は,ウラン資源探査,活断層耐震安全性評価,廃棄物地中処分,放射性物質の環境動態や,地下水流動や物質移行挙動,長期変動性など多くの地質科学と関連した分野の課題を有している.本セッション「原子力と地質科学(Nuclear Energy and Geological Sciences)」は,このような日本の原子力に関わる地質科学的課題について,地球科学的知見の議論及び関連する学会や研究者間の意見交換を行うことを目的としており,幅広い分野からの参加,発表を歓迎する.とりわけ高レベル放射性廃棄物の地層処分においては,北海道寿都町と神恵内村において2020年11月から開始された我が国初のサイト選定に関わる文献調査結果の報告書案が2024年2月に公表され,両地点の概要調査地区の候補が提示されたところである.本セッションでは,上記の文献調査結果に関する議論や,地質環境の調査・評価に関わる検討事例,さらには地層処分システムの長期間の安全性を示す論拠としてのナチュラルアナログ(天然類似現象)研究に関して招待講演も含め,原子力分野と地質科学に関する最新の研究事例について広く議論を行う.
T6.マグマソース・マグマ供給系から火山体形成まで From magma source and magma plumbing system to volcano formation
世話人:齊藤 哲*(愛媛大;saito.satoshi.nz[@マーク]ehime-u.ac.jp),草野有紀(産総研),江島圭祐・(山口大)
Convener: Satoshi Saito (Ehime Univ.), Yuki Kusano (AIST), Keisuke Eshima (Yamaguchi Univ.)
地球上に見られる多様な火成岩類は,マントル~地殻深部のマグマソース,火山体下のマグマ供給系からマグマ噴出に至る広い環境下でのマグマプロセスを経て形成されたものであり,野外地質調査や観測,各種実験・分析により得られる岩石・鉱物の産状や組織,化学組成などの解析からは,マグマの起源物質,活動規模,固結・冷却年代,温度圧力条件,酸化還元状態,噴火様式などについての情報を得ることができる.個々の火山体・深成岩体から火山帯・バソリスまで,また,様々な時代のプレート収束境界・プレート発散境界・プレート内などのマグマ形成場において,発生から定置・固結に至るまでのマグマの物理・化学的挙動や時間スケール,テクトニクスとの相互作用などを明らかにすることは,地球の進化およびダイナミクスの理解に重要である. 本セッションでは,多様なテクトニクス場において形成した火成岩体・火成岩類・火山噴出物を対象に,マグマの発生・輸送・分化・定置・噴出などのマグマプロセスにアプローチした研究発表を広く募集する.野外地質学・岩石学・鉱物学・火山学・地球化学・年代学・岩石磁気学・物理探査など様々な視点からの活発な議論を期待する.
【招待講演の予定】アントニオ アルバレツ(サラマンカ大・非会員)
T7.テクトニクス Tectonics
世話人:藤内智士*(高知大;s-tonai[@マーク]kochi-u.ac.jp)高下 裕章(産総研),中嶋 徹(日本原子力研究開発機構
Convener: Satoshi Tonai (Kochi Univ.), Hiroaki Koge (AIST), Toru Nakajima (JAEA)
テクトニクスは,地球をはじめとする固体天体の岩石圏の動きのことであり,多様な分野のデータにもとづいて議論が行われる.本セッションでは陸上から海洋における野外調査や各種観測,実験や理論などに基づき,日本や世界各地に発達するあらゆる地質体の構造,成因,形成過程や発達史に関する講演を募集する.地質学だけに限らず,地震学・測地学・地形学・岩石学・鉱物学といった幅広い分野からの発表の場を設けることで,それぞれの最新の知見の情報共有を行い,学際的な議論を行うことを目的とする.話題はローカルなものから広域テクトニクスに関するものまで問わない.例えば,日本海の拡大も含む西南日本弧の新生代テクトニクスについて,従来の地質図の見直しに加えて,応力履歴や放射年代の新たなデータが蓄積されてきたことで,これまでのモデルを見直す研究が進みつつある.その他にも,表層堆積盆に関連する層序学・古地磁気学的研究,古環境や火成活動の変遷史,付加体の形成史,先新生界の新生代変形史・熱史,そして,現在進行している地殻変形や活構造に関するもの,といった多様な研究分野の発表を歓迎する.
T8.都市地質学:自然と社会の融合領域 Urban Geology: Interdisciplinary research on natural and social environments
世話人:田村嘉之*(千葉県環境財団;tamura[@マーク]ckz.jp), 野々垣 進(産総研),北田奈緒子(GRI財団)
Convener: Yoshiyuki Tamura (Chiba Prefectural Environmental Foundation), Susumu Nonogaki (AIST), Susumu Nonogaki (GRI)
都市は,自然環境と社会環境の接点に存在する複雑なシステムである.レジリエントな都市を実現するためには,自然と社会の相互作用を理解することが不可欠である.都市地質学は,層序学,第四紀学,構造地質学,環境地質学,土木地質学,災害地質学,水文地質学など,都市に関連するすべてのテーマからなる総合的な地質学である.都市の地質情報は,都市の発展やインフラの維持に重要であり,極めて高い社会経済的価値を有している.国連は,持続可能な開発目標(SDGs)の1つに,持続可能な「都市」を挙げている.この目標を達成するために,地質の専門家は,関係するステークホルダーに必要な専門知識を提供するという重要な役割を担っている.また最近では,国のDX戦略の一環として,スマートシティの取り組みが各地で行われ,地質情報の社会実装のひとつの手段として期待されている.このような観点から本セッションでは,都市の地質環境に関わるさまざまなテーマの講演を受け付ける.
T9.九州と琉球弧の地体構造枠組み:最新の年代測定と視点 Geotectonic framework of Kyushu and Ryukyu arc: new age data and perspectives
世話人:磯﨑行雄*(東京大;isozaki[@マーク]ea.c.u-tokyo.ac.jp), 堤 之恭(国立科学博),谷 健一郎(国立科学博)
Convener: Yukio Isozaki (Univ. of Tokyo), Yukiyasu Tsutsumi (National Museum of Nature and Science, Japan), Kenichiro Tani (National Museum of Nature and Science, Japan)
日本列島形成史研究において,隣接するアジア大陸東縁部との地質学的関係はあらゆる解釈に最も重要な制限条件を与える.20世紀末には日本列島地殻のほとんどが顕生代の海洋プレート沈み込み帯産物から構成されることが確認された.21世紀になってジルコンの粒子ごとのU-Pb年代測定が広く普及し,年代未詳だった花崗岩や地層について新たに多数の年代データが得られるようになった結果,日本列島の地殻主部が南中国地塊の北東延長部で成長したことが確認された.しかし,中新世の日本海拡大によってそれ以前の地体構造が二次改変され,本州主部と九州西部・南西諸島との初生的連続関係が不明瞭となった.最近,琉球弧中部の徳之島から古原生代地殻岩石(18億年前変閃緑岩,角閃岩など)が発見され,東シナ海海底および南中国地塊地殻との地質学的関係が注目されている.また中国地方の山陰帯に相当する古第三紀花崗岩類の徳之島での産出は,四万十帯との関連で特異である.本セッションでは,日本のプレート沈み込み型造山帯の成長核および西南日本の大規模地質構造を考察する上で極めて重要な九州および琉球弧の地体構造について,主に広域変成岩および花崗岩類のジルコン年代に焦点をあて,最新のデータに基づく議論を行う.また,それ以外の日本地体構造単元と中生代東アジア大陸との比較・対比についても議論する.
【招待講演者の予定】新正裕尚(東京経済大・会員),斎藤 眞(産総研・会員)
T10.岩石・鉱物の変形と反応 Deformation and reaction of rocks and minerals
世話人:岡崎啓史*(広島大;keishiokazaki[@マーク]hiroshima-u. ac.jp),向吉秀樹(島根大),宇野正起(東北大)
Convener: Keishi Okazaki (Hiroshima Univ.), Hideki Mukoyoshi (Shimane Univ.), Masaoki Uno (Tohoku Univ.)
鉱物・岩石の変形プロセス(破壊,摩擦,結晶塑性変形)と反応プロセス(続成作用,変成作用,変質作用,交代作用など)は,H2O-CO2流体の関与や元素移動を介してしばしば強く相互作用し,地震,火山活動,グローバル元素循 環などの地球内部のダイナミックな現象に大きな影響を与える.本セッションでは,野外調査,化学組成分析,岩石組織解析,室内変形実験,反応実験,岩石学的・溶液化学的モデリング,組織形成モデリング,統計的データ解析などの近年,発達が著しい様々なアプローチによる最新の成果の発表を歓迎する.表層近傍から,地殻,マントル,プレート沈み込み境界などの様々な岩石・地質体を対象に,地震などの秒スケールからプレート運動などの100万年スケールの変形・反応現象や,また変形と反応を支配するナノからマイクロスケールの素過程から露頭スケール・プレートスケールの構造発達,など様々な時間・空間スケールの地質現象について議論したい.さらに,物質科学的な分析・解析と地球物理観測データと結びつけながら,ダイナミックな固体地球プロセスを理解する新たな展開を期待したい.
【招待講演者の予定】大柳良介(国士舘大・会員),西山直毅(産総研・会員)
T11.鉱物資源研究の最前線 Frontiers of Mineral Resources Research
世話人: 中村謙太郎*( 東京大;kentaron[@マーク]sys.t.u-tokyo. ac.jp),町田嗣樹(千葉工業大) Convener: Kentaro Nakamura (Univ. of Tokyo), Shiki Machid (Chiba Institute of Technology)
資源は,人類の文明を支えるために不可欠の要素であり,最先端の電子技術・環境技術にも多様なレアメタル資源が必須である.そのため,人類が今後環境・エネルギー問題を解決し,持続可能な社会を発展させる上で,資源の安定的な確保は極めて重要な課題と言える.このような背景のもと,海底鉱物資源をはじめとする新しい資源の開発に向けた動きが活発化し,鉱物資源への注目が高まっている.鉱物資源の形成過程に関わる様々な元素の輸送・濃集過程は,地殻・マントルにおけるプレート運動やマグマ活動,大気・海洋における環境変動など,地球におけるダイナミックな物質循環と分化の一部に他ならない.そのため,鉱物資源の成因を考える上では,地球全体にまたがるグローバルな物質循環とその変遷が,資源形成とどのように関わってきたのかについての包括的な理解が不可欠である.そこで本セッションでは,鉱物資源そのものに対する研究に加えて,資源の形成メカニズムと地球の表層および内部環境,テクトニックセッティング,マントルダイナミクス等との関わりについてグローバルに議論する場を提供する.さらに,鉱物資源研究における新しい研究アプローチや研究手法を提案する機会も提供したい.
T12.海域火山と漂流軽石 Submarine volcano and drifting pumice
世話人:石毛康介*(電力中央研究所;ishige3821[@マーク]criepi.denken.or.jp),及川輝樹(産総研)
Convener: Kosuke Ishige (CRIEPI), Teruki Oikawa (AIST)
近年,西之島やフンガトンガ・フンガハアパイ,硫黄島での噴火活動が活発化しており,海域火山が注目されている.特に,2021年の福徳岡ノ場火山の爆発的噴火は,成層圏まで到達した噴煙と,南西諸島をはじめとする日本各地に漂着した浮遊軽石が社会に大きな影響を与えた.これら海域火山の活動は,航空機や船舶,リモートセンシング技術によって観測され,噴火の規模や様式,推移の特徴,そして浮遊する軽石の漂流過程などが解明されつつある.しかし,陸域火山に比べて噴火現象の理解や災害対策は依然として困難である. 本セッションでは,海域火山における噴火や海底火山噴火の発生メカニズム,マグマプロセス,噴火様式,噴火推移,噴出物の特性や浮遊軽石現象などに関する最新の研究成果や監視技術,アウトリーチ活動や研究・観測体制について共有し,議論する予定である.また,海域火山噴火だけでなく,陸域火山での水蒸気プリニー式噴火や浮遊軽石現象に関する研究発表も広く歓迎される.野外地質学,岩石学,鉱物学,火山学,地球化学,リモートセンシング,アウトリーチ等,様々な視点からの活発な議論を期待する.
T13.堆積地質学の最新研究 Latest Studies in Sedimentary Geology
[共催:日本堆積学会,有機地球化学会,石油技術協会探鉱技術委員会]
世話人:山口悠哉*(石油資源開発株式会社;yuya.yamaguchi[@マーク]japex.co.jp),白石史人(広島大),松本 弾(産総研)
Convener: Yuya Yamaguchi (JAPEX), Fumito Shiraishi (Hiroshima Univ.), Dan Matsumoto (AIST)
堆積物や堆積岩(砕屑岩・珪質岩・炭酸塩岩・蒸発岩・石油・石炭など)とそれを構成する物質についての最近の研究成果を対象とし,堆積地質学分野の最新の知見を共有するとともに,今後の展望について議論する.堆積物/堆積岩の形成に関わるプロセス(風化・侵食・溶解・運搬・堆積・沈積・続成作用),堆積物/堆積岩の粒子形態・組織・構造・岩相・層序・堆積相・生物相・環境の物理的・化学的・生物学的・有機地球化学的研究,新たな分析・探査手法などについての研究発表,石油・石炭地質に関する成因・産状・資源量などについての研究発表を募集する.地質記録から高精度で古環境を解明する研究や二酸化炭素の回収・貯留技術に関わる研究が世界規模の気候変動問題の解決の一端を担っているように,堆積地質学の最新研究を用いて社会課題の解決にアプローチする発表も期待する.
【招待講演者の予定】浅海竜司(東北大・会員),持永竜郎(三菱ガス化学株式会社・非会員)
T14.沖縄トラフと東シナ海陸棚研究の最前線 Current status of the studies on Okinawa Trough and East China Sea continental shelf
世話人:小原泰彦*(海上保安庁海洋情報部・海洋研究開発機構・名古屋大;ohara[@マーク]jodc.go.jp),三澤文慶(産総研),針金由美子(産総研)
Convener: OHARA, Yasuhiko (Hydrographic and Oceanographic Department of Japan/JAMSTEC/Nagoya Univ.), Ayanori Misawa (AIST), Yumiko Harigane (AIST)
沖縄トラフは,ユーラシアプレートに位置する活動的な背弧海盆であり,200万年前からリフティングが発生している.大陸地殻においてリフティングの発生を理解できる場として,沖縄トラフは重要な地質学研究のターゲットである.海上保安庁海洋情報部では2008年度から沖縄トラフ・東シナ海陸棚において,地形・地殻構造調査およびドレッジやコアによる底質調査を実施している.2020年と2021年には,海上保安庁で最大の測量船となる「平洋」と「光洋」が就役し,沖縄トラフ・東シナ海陸棚調査が更に強化されている.一方,産業技術総合研究所でも,2008年度から沖縄周辺海域の海洋地質・地球物理調査を開始し,沖縄周辺海域の1/20万の海洋地質図の作成がなされてきた.また,海洋研究開発機構やエネルギー・金属鉱物資源機構では,特に沖縄トラフの熱水性鉱床に着目した調査を実施している.さらに,これらの組織的な調査の他に,最近では研究者の独自の発想により,白鳳丸などを用いた航海が複数回実施されている.これまで,これらの研究成果は,個々の研究者から適時になされてきた.ここで,これらの調査の研究成果がまとまりつつある今,関係する研究者が一同に会して最新の成果を共有し,今後の研究の方向性を議論することは有用であると考え,地質学会のトピックセッションとして提案したい.
【招待講演者の予定】大坪 誠(産総研・会員),新井隆太(海洋研究開発機構・会員)
T15.地域地質・層序学:現在と展望 Regional geology and stratigraphy: review and prospect
世話人:辻野 匠*(産総研;t.tuzino[@マーク]aist.go.jp),佐藤大介(産総研),松原典孝(兵庫県立大)
Convener: Taqumi Tuzino (AIST), Daisuke Sato (AIST), Noritaka Matsubara (Univ. of Hyogo)
地域地質は自然科学の一分野である地質学において,直接の自然界にアクセスし記載する重要な領域であり,層序学(広義)はその地質体の産状を記載し,それぞれの成因や前後関係を確定する地質学の基礎的分野である.これらの分野・領域は個別分野の研究が進展すると忘れられることもあるが,研究成果がフィードバックされるべき対象として常に存在しつづける分野・領域であり,そのポテンシャル維持のためには,研究者が意図的に集って議論する場が必要である.そのためには明示的にセッションを設定することが有効な手段となろう.このセッションでは国内外を問わず,地域の地質や層序に関連した発表を広く募集し,地質図,ルートマップ,年代,地球化学データ,リモセン,ドローン,新しい調査手法,アイディアの紹介なども歓迎する.また,地域研究に根ざした,地域間の層序対比や年代層序スケールに関する発表も広く受け容れる.これらの発表及びそこで交される議論を通じて,本セッションが地域地質の知見の蓄積・層序の精密化・標準化の発展に貢献しつつ,新しい手法を取り込んで今後のフィールドサイエンスの底上げを担う研究者集団を涵養する場として役割を担うことを期待するものである.
T16.地球史 History of Earth
世話人:桑野太輔*(京都大;kuwano.daisuke.3f[@マーク]kyoto-u. ac.jp),冨松由希(福岡大),大山 望(パリ国立自然史博)
Convener: Daisuke Kuwano (Kyoto Univ.), Yuki Tomimatsu (Fukuoka Univ.), Nozomu Oyama (Centre de Recherche en Paléontologie)
地球史を通じて,大気,海洋,生命圏は,さまざまな時間スケールで密接に関わり合い,大きな変化を遂げてきた.これらの変動は,地表に露出する岩石,地層,海洋底の堆積物,およびそれらに含まれる化石に記録されている.これらの記録をもとに多岐にわたる科学的手法を駆使して,過去の地球で起こった様々な変動について紐解いていくことは地質学の大きな醍醐味の一つであり,こうした地球史の解析は,過去の地球を理解するだけでなく,未来の地球を予測する手がかりにもなる.本セッションでは,研究分野の枠を超え,陸域・海域,特定の時代や手法に捉われず,気候変動,地球表層環境の変動,生物進化や生態系の復元,テクトニクスの解明など,幅広いテーマの発表を取り扱う. 本セッションを通して,参加者が,あらゆる地質時代や研究分野にわたる成果を共有し,最新の成果をもとにインタラクティブな議論を展開する場にしたいと考えている.特に,大学院生や若手研究者の積極的な参加を歓迎し,研究者同士の連携強化と今後に繋がる新たな視点やアイデアを発掘できることを期待している.
【招待講演者の予定】松崎賢史(東京大大気海洋研・会員),武藤 俊(産総研・会員)
T17.沈み込み帯・陸上付加体 Subduction zones and on-land accretionary complexes
世話人:橋本善孝*(高知大;hassy[@マーク]kochi-u.ac.jp),坂口 有人(山口大),山本由弦(神戸大),中村恭之(海洋研究 開発機構)
Convener: Yoshitaka Hashimoto (Kochi Univ.), Arito Sakaguch (Yamaguchi Univ.), Yuzuru Yamamoto (Kobe Univ.), Yasuyuki Nakamura (JASMTEC)
沈み込みプレート境界の多様なすべりと流体の関係の解明など,陸上付加体の沈み込み帯のアナログ物質としての役割は,近年益々重要性を増している.沈み込み帯・陸上付加体に関するあらゆる分野からの研究を歓迎する.野外調査,微細構造観察,分析,実験,理論,モデリングのみならず海洋における反射法地震探査,地球物理観測,地球化学分析,微生物活動など多様なアプローチに基づいた活発な議論を展開したい.次世代の沈み込み帯・陸上付加体研究者を育てるべく,学生による発表も大いに歓迎する.
T18.令和6年能登半島地震(M7.6)The 2024 Noto Peninsula Earthquake (M7.6)
世話人: 石山達也*(東京大地震研究所;ishiyama[@マーク]eri.u-tokyo.ac.jp),山﨑新太郎(京都大防災研)
Convener: Tatsuya Ishiyama (Earthquake Research Institute, the Univ. of Tokyo), Shintaro Yamasaki (Disaster Prevention Research Institute Kyoto Univ.)
2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震(M7.6)は,能登半島北部を震源とする逆断層型の地震であり,能登半島を中心とした広域に強震動・津波・地盤災害・斜面災害をもたらしたほか,震源域の海岸に顕著な地震時隆起 が生じた.日本海側の変動帯に位置する能登半島は,日本海拡大以降のテクトニクスを背景として第四紀に顕著な隆起を経験し,半島内や富山トラフなどの周辺海域には多数の活断層が分布する.以上を踏まえて,本セッションでは能登半島地震に伴う地殻変動・津波・地盤災害・斜面災害や,能登半島周辺の活断層・地質構造・テクトニクス・過去の地震活動など,幅広い分野からの報告を歓迎する.
【招待講演者の予定】平松良浩(金沢大・非会員)ほか1名