招待講演
世話人から提案され,行委委員会が承認したトピックセッション招待講演者(予定も含む)をご紹介します.講演時間は変更になる場合があります.
T1 変成岩とテクトニクス | T2 マグマ供給系 | T3 文化地質学 |
T4 岩鉱の変形と反応 | T5 沈み込み帯・付加体 | T6 中琉球地体構造単元 |
T7 堆積地質学 | T8 原子力と地質科学 | T9 ジオパーク |
T10 テクトニクス | T11 都市地質学 | T12 地球史 |
T13 地域地質・層序学 | T14 九州の火山 | T15 海域火山と漂流軽石 |
T1.変成岩とテクトニクス
川口健太(広島大学,会員)30分 川口会員は,精緻な野外調査と岩石記載を基盤として,膨大かつ精密なジルコンU–Pb同位体分析を駆使した,西南日本および韓半島の地体構造論の解読に取り組んでおられる.川口会員は特定の調査地域に囚われず西南日本の大小様々な地質体(三波川帯,周防帯,舞鶴帯,黒瀬川帯,飛騨帯など)を踏査し,小規模かつ特異な岩相の発見と精密な全岩化学組成およびジルコンU–Pb年代に基づいて,各帯の形成論に新たな視点を提供してき た( 例えば,Kawaguchi et al., 2020, 2022). さらに, ジルコンU–Pb・ Lu–Hf同位体組成の対比により韓半島と西南日本の地質関連性を明確化し,アジア大陸東縁における両者の形成テクト ニ ク ス を 議 論 し て い る(Kawaguchi et al., 2023a, 2023b).川口会員に講演していただくことで,地質年代学的な知見の提供と変成帯を含む日本列島の地体構造論の新たな展開・議論が創出されることが期待される.
T2.マグマソース・マグマ供給系から火山体形成・熱水変質まで
西本昌司(愛知大学,会員)30分 西本会員は,岐阜県瑞浪市で掘削された花崗岩ボーリングコアより,熱水変質岩の一種であるエピ閃長岩を発見した(Nishimoto et al., 2014).これは国内初のエピ閃長岩の研究報告である.エピ閃長岩は国内ではあまり知られていない岩石であるが,岩石の熱水変質過程を理解する上で重要な研究対象であるため,その発見者である西本会員に発見に至るまでの経緯や地質学的意義などについて紹介していただく.
T3.文化地質学
田中尚人(熊本大学,非会員)30分 阿蘇地域にある世界屈指のカルデラには,火山と共生する人の文化が存在する.人々は阿蘇の地形を活かし,カルデラ上部に広がる広大な草原の恩恵を享受するため,上部の草原と,陥没カルデラ底部の耕地を結ぶ形で「耕地-集落 -森林-草原」という垂直的な土地利用をおこない,そこに文化的景観を形成してきた.この「阿蘇の文化的景観」を形成する火山,地質,地形等の文化的価値と人の生活につい て講演していただく.
一村一博(美里町石橋愛好会,非会員)30分 日本の石橋は,その多くが江戸から大正時代に架けられた.現存するアーチ石橋のうち多くが九州に現存している.石材の起源は阿蘇の噴火であり,その活用の歴史は古墳時代までさかのぼる.石材となる溶結凝灰岩の活用と石工集団,さらには阿蘇の恵みである水と石橋の景観などについて,地元で石橋の維持・保護活動をされている一村氏に講演をしていただく.
T4.岩石・鉱物の変形と反応
氏家恒太郎(筑波大学,会員)30分 氏家会員は,石垣島トムル変成岩や長崎県西彼杵変成岩など,スロー地震発生域を経験したと考えられる地質帯を対象に,スロー地震の地質学的痕跡を探る研究を行っている.これまでの研究により,スロー地震発生域における変形メカニズムやレオロジー,化学反応等の解明に大きく貢献されている.近年の一連の研究成果は本セッション聴講者の興味を大きく引くと期待され,招待講演に資すると考える.
亀田 純(北海道大学,会員)15分 亀田会員は粘土鉱物の変形や反応に伴うすべり挙動や流体の供給プロセスなどの研究を行ってきた.これらの観点から,日本海溝や南海トラフなどの沈み込み帯での地震発生において粘土鉱物が果たす役割の解明に大きく貢献されている.また近年では火星の表層における岩石の反応についての最先端の研究も行っており,亀田会員の一連の研究成果は本セッション聴講者の興味を大きく引くと期待され,招待講演に資すると考える.
T5.沈み込み帯・陸上付加体
氏家恒太郎(筑波大学,会員)30分 IODP Expedition 405が成功裡に完了し,その成果を日本人コチーフであった氏家会員に講演いただく. 本 Expeditionは東北地方太平洋沖巨大地震・津波発生メカニズムや地震後の応力回復過程の理解に迫ることを目的としており,日本にとって重要な課題と言える.また,IODPの 枠組みの転換期における最後のExpeditionであり,次の国際海洋掘削において日本が主導する形を象徴する.
T6.中琉球の新たな地体構造単元:徳之島帯の特徴と研究課題
宇野正起(東京大学,会員)30分 宇野会員は,変成岩岩石学をベースとして,岩石組織の詳細な観察と微分熱力学解析・熱力学モデリングに基づき高圧変成岩や高温変成岩の詳細な温度-圧力履歴の解明を試みている.最近の手法開発,新たに発見された徳之島の苦鉄質変成岩類の最新の分析結果と形成過程についての予察的考察を講演していただく.
桑谷 立(海洋研究開発機構,会員)30分 桑谷会員は,変成作用の累進的脱水作用一般について研究され,南関東の丹沢変成帯について成果をあげておられる.かなり距離は離れているが,同様に四万十帯に隣接する点で徳之島の変成岩類に類似しており,比較可能とみなされる丹沢変成帯についての最新の研究レビューを紹介していただく.
T7.堆積地質学の最新研究
池原 研(産業技術総合研究所,会員)30分 池原会員は,1982年に地質調査所に入所以降,日本周辺海域の海洋地質調査に従事し海洋地質図を作成されるなど, 40年以上国内の海洋地質研究をリードしてきた.また,国際学会やIODPなどの活動を通じて,堆積学・海洋地質学に対して国際的にも貢献をされてきた.本招待講演では,これまでの研究史を振り返りつつ,近年精力的に進められている海底堆積物を用いた古地震履歴の解明に関する研究をご紹介いただく予定である.
山田泰広(九州大学・英国ロンドン大学,会員)30分 山田会員は「地下を探る」ことをキーワードに研究されており,構造地質学,物理探査学,掘削科学などをベースに,エネルギー資源地質学やCO2地中貯留研究といった分野で活躍されている.招待講演では,近年新しいエネルギー資源としての可能性が注目されている天然水素について,その九州地域におけるポテンシャル評価をご紹介頂く予定である.
T8.原子力と地質科学
井川怜欧(産業技術総合研究所,非会員)30分 地層処分のサイト選定においては,沿岸海底下等における地層処分の技術的課題に関する研究会(2016)により,沿岸部等は「技術的な実現可能性がある」地点とされており,現在,産業技術総合研究所を中心に,沿岸部地質環境調査・処分システム評価統合化技術開発事業が進められている.講演では,本事業のプロジェクトリーダーである井川氏よりこれまでの知見をご紹介いただき,沿岸海底下処分の可能性について広く議論したい.
T9.大地と人間活動を楽しみながら学ぶジオパーク
招待講演なし
T10.テクトニクス
遠藤俊祐(島根大学,会員)30分 遠藤会員は緻密な野外地質調査・岩石記載に基づいた研究を展開し,特に四国三波川変成帯を対象とした数々の研究 成果は,沈み込み帯のテクトニクスの理解に大きく貢献してきた.そこで,遠藤会員のこれまでの成果を中心に,白亜紀の沈み込み帯のテクトニクスを議論していただくことを目的に招待講演者として選定した.
T11.都市地質学:自然と社会の融合領域
石原与四郎(福岡大学,会員)30分 石原会員は堆積学をベースにしながら,ボーリングデータを始めとする都市平野部の地質地盤情報にも通じており,地盤工学会での取り組みとして,九州地方の地盤情報共有の仕組みづくりに携わっていた経験がある.またボーリングデータの解析経験も豊富であり,各地で沖積層の3次元解析の実績がある.以上により,熊本大会での本セッションの招待講演者としてふさわしいと考える.
T12.地球史
松本廣直(筑波大学,会員)30分 松本会員は,堆積岩中のオスミウム同位体比を用いた地球化学的研究に取り組んでいる.近年では,オントンジャワ海台を噴出した大規模火山活動が海洋環境に及ぼした影響を解明するため,当時の海洋―大気システムを再現するモデルを提唱し,新たな知見を提供するなど,松本会員の研究は白亜紀の古環境復元において重要な貢献を果たしている.本講演では,近年の研究動向や最新の話題などについて紹介していただく.
T13.地域地質・層序学:経過と集大成
羽地俊樹(産業技術総合研究所,会員)30分 羽地会員は若手中堅の中で地域地質に根差した成果を多数挙げている,勢いのある研究者であり,将来分野を牽引する一人となろう.氏が近年とりくんでいる山陰地域は前世紀後半に研究が一段落し,その後の進展の乏しい典型的な日本のフィールド事情を示す地域だが,稠密なフィールド調査にもとづく変形量の定量的な見積りにより,中新世の日本海拡大時の東北日本弧と西南日本弧との運動像・運動史の違いを明らかにするなど画期的な結果を挙げ,しかも研究は構造地質分野に留まらない.氏を招待しロールモデルとして参考にすることは広く聴衆に益がある.
T14.九州の火山テクトニクス
趙 大鵬(東北大学,非会員)30分 趙氏は九州の地下構造について地震波トモグラフィを用いて火山の形成とスラブおよび流体の関係,別府-島原地溝の形成要因や2016年熊本地震の発生と流体の関係を指摘するなど,画期的な成果を多数報告しており,九州の火山テクトニクスを議論する上で不可欠な存在である.
三好雅也(福岡大学,正会員)30分 三好会員は九州の火山岩の岩石学学的研究に基づき,九州直下に沈み込んだスラブ起源流体のマントルへの関与を指摘し,大分熊本構造線と阿蘇カルデラの火山活動の関連性を論じるなど重要な成果を報告しており,本セッションに最適の人物の一人である.
T15.海域火山と漂流軽石
招待講演者調整中