セッション詳細

[OS_A]オーガナイズドセッション A
「くんずほぐれつ、デザインする」

2025年6月28日(土) 15:30 〜 17:30
口頭2会場(C102)
司会
 横溝 賢(札幌市立大学 博士(工学)デザイナー)

パネリスト
 東方 悠平(八戸工業大学 博士(映像)アーティスト) 
 宮本 一行(札幌大谷大学 博士(美術)芸術家)  
 曽我 修治(日立製作所 博士(工学)デザイン研究者)
 久しぶりにまちの古本屋を訪れた。4畳ほどの空間にびっしりと並ぶ書籍の背中を眺めていると、デヴィッド・ホックニーの図録に目が止まった。書棚から引っ張り出してパラパラとめくる。線を使った模様のスタディにしばし魅了され、今度やってみようかな・・と独り呟いて棚に戻して店を後にした。翌朝、PCを開くと、まるでこちらの思考を読んだかのようにホックニーのニュースが現れた。「店内ビーコンとスマホがリンクしたのだろうか…」この既視感は、私たちがすでにシンギュラリティを生きていることを示している。
 デザインする者として不穏なのは、偶然の出会いを通じて生まれる創造的な探求が、AIに先回りされ、意図しない形で秩序化されることだ。微生物が落葉を分解し、群衆が渋谷交差点をぶつかることなく渡るように、自然界も社会も「くんずほぐれつ」を繰り返しながら調和を形成している。しかし、AIはその無秩序を許容せず、偶然性の余白を閉ざしてしまう。
 本セッションでは、未知に向き合いながら、多面的な本質を発見し、複雑なものを複雑なままに連関させる「くんずほぐれつ」の動的プロセスに注目する。デザインの過程が「分析と統合」「混沌と秩序」の間を往復するリズムであることを再考し、AI社会が生み出す秩序化の流れに抗しながら、不確実性を抱えた複雑な世界と向き合うデザインの新たな知の可能性を議論する。